不況に追い討ちかける大震災や超円高
本当に厳しかった2011年の日本経済
2011年を振り返ると、わが国にとって大変厳しい年だった。08年9月のリーマンショックからようやく立ち直りつつあると思ったら、3月には未曽有の“大震災”に見舞われ、東北地方の工場などは大きな痛手を受けた。福島の原子力発電所の問題解決には、なお多くの時間を要することだろう。
その後もタイで大洪水が発生し、自動車産業を中心に、進出した多くのわが国企業が被害を受けた。金融市場では史上最高レベルまで円高が進み、輸出企業などの収益に痛手を与えた。わが国の政治は、そうした厳しい状況に十分な対応ができていない。
ただ、そうした厳しい条件にもかかわらず、被災地の人々は復興に向けた歩みを始めている。わが国企業も、収益の改善を目指して一層努力している。
わが国は決して「強さ」を失っていない。それは、被災地の多くの人々が明日の希望に向かって歩む姿を見てもわかる。あるいは、企業の業績回復のテンポを見ても理解できる。
確かに、家電製品やスマートフォンなどでは、韓国や台湾の企業が台頭した。しかし、そこに使われている部品や部材などの分野では、依然として相応の優位性を維持している。
わが国企業の多くは、組み立て型(アッセンブリ)から、技術集約性の高い部品などの供給にビジネスモデルを変えて、しっかり生き残っている。それを過小評価すべきではない。
そして、もう1つ忘れてはならない点は、わが国経済を支える“現場力”だ。政治が頼りなくても、大震災に見舞われて工場は大きく損害を受けても、多くの人々が力を合わせて復旧に努めた。
その結果、わが国経済は、予想以上の復興のスピードを示すことができた。その“現場力”は、多くの海外メディアから称賛されている。
我々は、誇るべき“現場力”を忘れてはならない。2012年は、その“現場力”をもっと有効に使うべきだ。