「三菱マテリアルグループを率いる能力は、当然ながら持っていると考えている。持っていないと考えるならこの席にいるべきではない」
仕事納めだった人も多かったであろう、2017年12月28日。検査データ改ざん問題に対する特別調査委員会の中間報告会見の場で、竹内章・三菱マテリアル社長は、自身らについて大胆にもこう言ってのけた。だが、特別調査委によって明らかにされた不正の実態は深刻だった。
何しろ、不正に手を染めていた同社子会社の三菱伸銅と三菱電線工業の製作所には、それぞれ「需要家別検査ポイント表」「シルバーリスト」なる不正の“指南書”が、少なくとも1990年代から存在していたというのだ。
特別調査委は、調査が完了した三菱伸銅を「製造業を営むものとして基本的な事項がないがしろにされていた」と批判。不正案件の数が膨大で、調査継続中の三菱電線についても「非常に深刻な内容を含んでいる」と懸念を示した。
一方、現時点では経営トップに重い処分が下されているとは言い難い。社長辞任に追い込まれたのは三菱電線の村田博昭氏のみ。三菱マテリアル出身の堀和雅・三菱伸銅社長は13年4月に三菱伸銅の社長に就任して同社のガバナンスを取り仕切ってきたはずだが、今のところ18年1月の報酬を30%自主返上するだけで済まされている。