Photo by Yoshihisa Wada
警察が採用難に直面しつつある。実は、近い将来に“大量退職時代”が控えていて、今「採用力」を強化しないと深刻な人手不足に陥る懸念があるのだ。こうした危機を前に、警察官の待遇改善が進んでいる。特集『公務員の危機』の本稿では、全都道府県の警察を管理する警察庁で採用担当部門のトップを務める森元良幸長官官房長に、さらなる打ち手と警察官に適性のある人物像を尋ねた。(ダイヤモンド編集部 井口慎太郎)
待遇を重視する警察官の志望者は多い
賃上げトレンドは継続か
――警察庁が若手警察官を対象に2024年度に実施したアンケート調査では、就職活動で初めて警察官への就職を検討したいわゆる“潜在層”は全体の25%にとどまるという結果が出ました。どう受け止めていますか。
25%が多いか少ないかの評価は難しいですが、若い人の数がそもそも多かった時代は、警察の仕事に子どもの頃から共感して応募されてきた方が多かったです。さまざまな職業を俎上に載せた上で警察を選んだ潜在層に対しては、今後も積極的にアピールする必要があります。
若手警察官は処遇とワーク・ライフ・バランスの面では「充実している」と考えている割合が高いことも分かりました。潜在層のうち21%は志望動機に「安定した職業に就きたい」と回答していました。これまではあまり前面に出していなかった待遇面をもっと説明した方がよいと感じました。
一方で、受験時の懸念点に警察学校の厳しさを挙げる声は多く、4割以上に上りました。警察庁の採用ホームページの中では警察学校の部分の閲覧が圧倒的に多いです。警察学校はハードの老朽化が進んでいて、築50年を超えている施設が4割に上ります。「過剰に厳しい」と思われがちな指導スタイルと併せて改善の余地を探っています。
SNSによる情報発信も本気で取り組む必要があり、若手警察官が応募を呼び掛ける動画を各警察から募っています。最もリアクションが大きかった岡山県警の動画はX(旧ツイッター)で11万回表示されています。
――少子化で採用が難しいのは他の官公庁も民間企業も同じです。警察の訴求力はどこにありますか。
やりがいだと思います。直接困っている人の役に立てるのは大きい。アンケート調査でも、直接人と関わることの充実感を挙げる声は多かったです。そこに共感してくれる人を採用したい思いは強いですね。また意外かもしれませんが、警察職員の育児休業の取得率は男性で6割を超え、女性は100%に達しているという調査結果があります。これは民間にも勝っているのではないでしょうか。
――採用試験で、SPI(民間企業でも使われる基礎能力検査)の利用が広がっています。
全国でSPIの利用は広げています。採用の間口を広げて人材の多様性も広げたいと思っています。残念ながら採用試験の合格者も警察学校に入るまでに辞退してしまうケースもあります。合格者を増やしながら組織の魅力を伝えて、人材の質を担保する努力を続けます。
――警察学校を出て交番勤務に就くと拳銃を持ちます。他の仕事と大きく異なるポイントだと思います。
人材確保のため、従来は警察の採用試験を受けてこなかった層へのアプローチが求められているのは、時代の要請だ。次ページでは、きれい事だけでは通じない「厳しさ」も含む警察官の働き方や、求められる人物像を森元長官官房長に聞いた。近く訪れる“警察官大量退職時代”を乗り切るための方策も語ってもらった。







