12月に来日していたフランスの「レギュラシオン理論」の旗手、経済学者ロベール・ボワイエ教授に、早稲田の藤原書店でユーロについて聞くことができた。「フランスの指導者層にユーロ維持に対する疑念は生じていないのか」と質問したところ、次のような非常に興味深い答えが聞かれた。

「フランスのエリート層にユーロ維持に関する揺らぎは見られない」「12月8~9日のEU首脳会議には悪いニュースとよいニュースがあった。EU首脳が具体的な解決策を提示できなかったことは悪いニュースだ。しかし、メルケル独首相が、ドイツの将来は欧州連邦主義のなかにあると宣言したことはよいニュースだった。もう一つよいニュースがあった。英国がEUから事実上脱退した(笑)。英国の関心はシティの保護にあり、ユーロの保護にはない」。

 ボワイエ教授は近著『金融資本主義の崩壊』でも、英国的金融行政への嫌悪感を示している。キャメロン英首相が欧州条約の改定議論から離脱したことで全会一致原則が崩れ、他のEU26ヵ国は話を進めやすくなると彼は見ている。「ユーロは崩壊しないと断言はできないが、今後も欧州の首脳は連邦への道をたどっていく。しかし、多くの障害を乗り越えていかねばならない。それにはきわめて欧州主義的な考えが必要だ」。

 同教授が言うように、欧州大陸の指導者は財政統合に向けた努力を今年も示していくだろう。しかし、問題は市場が要求するスピードに応じられるかだ。間に合わないときはECBが緊急避難的に金融システムを支える必要が生じる。