モテない男2人組の
カミングアウトにドン引き

 そんな調子で、20時を回っても男性はポツリポツリと来店するのみ。われわれはなかなか相席になれずにいたのだが、もはや仕事で来たということを完全に忘れ始めた頃、やっと「こちら相席よろしいでしょうか?」と声を掛けてくる店員と共に、地味な服装の男性2人組が登場した。

 入店して2時間、ついに相席のスタートである。

 筆者の隣に座った男性は介護士、友人の隣に座った男性は埼玉の飲食店でキッチンスタッフとして働いており、2人は高校時代の友人同士だという。初見では30代前半かなと感じたが、まだ24歳。「今度ディズニーランドに行きませんか」と唐突に誘ってくるあたり、女慣れしていない印象だ。

 イケメン歳上サラリーマンが好きな友人は、スマホから視線をまったく外さずに「うんうん」と相槌を打つだけのマシンと化している。それでも懸命に話しかける24歳を不憫に思っていた矢先だった。

「ぼくハゲで悩んでて…、いま治療しているんですよね」

 介護士の男性が突如として爆弾を投下した。

 言葉を失ったのは言うまでもない。なんでも10代の頃から徐々に頭髪の衰えが気になり始め、今や1ヵ月9000円もする治療薬を使っているそうだ。予期せぬ告白に私はオロオロと「でも若いうちから治療とか始めておくほうが絶対いいと思う…」などと苦しい慰めを絞り出し、友人も半笑いで頷く。しかし私のフォローが虚しく響くほどに、その男性は確かにハゲていた。

「しかも治療薬の副作用で太りやすくなっちゃって、体重の増加が止まらないんですよね」

 重い。お洒落なBARで語るには、あまりに重すぎる話題だ。ネタにしてもリアルすぎて笑えない。ここでツッコミ役の男性でもいればいいが、もう一方の男性といえば、神妙な顔をしてグラスを眺めて黙りこくっている。最初の自己紹介タイムのときに「今日は既に2組と相席したんですけど、割とすぐ帰られちゃって…」と言っていたのも納得だ。こんな切実なるお悩み解決はムリなので、早々に話を切り上げ帰ることにした。