年末のテレビなどを通して、近年大きな災害に見舞われた被災地の方々が「当たり前の日常を取り戻したい」と祈りを込める健気な姿を見かけます。心身ともに疲弊し切って限界ぎりぎり。何とか平常心を保っている被災者を「食い物」にする輩は残念ながら、いまだに後を絶たないのが現状です。(露木行政書士事務所代表 露木幸彦、名前はすべて仮名)
熊本地震で被災
軽度の脳梗塞に
昨年の大みそかはどのように過ごされましたか?私が除夜の鐘の音とともに思い出したのは、今回の相談者である谷美鈴さん(32歳、会社員)の存在。美鈴さんは約2年前の熊本地震の被災者で、地震発生時、亡き両親が残してくれた戸建て住宅に1人で暮らしていました。水道管が壊れ、建物は傾き、外壁は崩れたせいで雨風をしのぐことはできず、日常生活を送るのもままならない惨状でした。美鈴さんは避難所生活を余儀なくされ、そこから会社への道のりは車で片道1時間。長引く避難所生活によって身体への負担がピークに達し、軽度の脳梗塞を発症しそのまま入院しました。
5ヵ月のリハビリを経て、何とか職場復帰を果たしたものの、再発のリスクを抱えながら今までのように働くことは難しく、年収は450万円から300万円へ激減してしまったそうです。
自宅修繕は、地震保険や市や国から助成金が支給されたものの、一度傾いた建物を元に戻すには多額の費用が必要だったそうです。美鈴さんは300万円の持ち出しを余儀なくされました。たびたび襲ってくる余震、次第に減少していく貯金の残高、そして病気の再発の可能性……。