応用言語学や脳科学、教育心理学などのアカデミックな研究では「外国語学習の機会が、子どもの知力やIQを高める」といった知見が蓄積されつつある。本連載では、発売直後から立て続けに増刷が決まった元イェール大学助教授・斉藤淳氏の最新刊『ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子ども英語』から一部抜粋して、「世界のどこでも生きていける頭のよさ」を育てるための英習メソッドを紹介する。
10歳までは「日本語で英語を学ぶ」のは不要
小学校高学年くらいになると、抽象的な物事を理解する力が徐々に身についてきて、基本的なロジックを読み解いたり、自分の主張を表現したりできるようになってきます。
大人の脳に近づいてくるこの時期、子どもの論理的な思考力はグンと伸びます。こちらが叱ったりしても、子どもから意外とスルドイ反論が飛んできて、かえって大人のほうが戸惑うなどということも少なくありません。
外国語習得について言えば、このあたりから母語による学習が効果を発揮します。逆に言えば、10歳くらいまでは「日本語による理解」は不要だということです。
日本語で書かれた文法解説を読んだり、単語帳や和英辞典を使って語彙を増やしたりといった英語学習には2つのメリットがあります。
(1)暗示的知識を明示的知識に変換できる
(2)学習スピードを高速化できる
幼いころからこれまでの方法を実践してきた子であれば、この段階で簡単な英文くらいは話せてもまったく不思議ではありません。しかしその子はおそらく「自分がどういうルールで英語を使っているのか」をうまく説明できないと思います。
母語での文法学習は、こうした暗黙の「なんとなく」のルールを明示化することで、より正確な英語表現を可能にします。
たとえば、ネイティブの子どもたちは「3人称・単数・現在形の場合、動詞にsがつく」と説明されてはじめて、「なるほど、たしかにこういうときには、みんなsをつけているなあ」と気づきます。「三単現のs」といえば、中学1年で習うごく初歩的な文法項目の印象がありますが、ネイティブの子どもたちですら、かなり大きくなるまでsをつけ忘れることがあります。
文法学習には、初歩的ミスを減らし、より洗練された英語へと磨き上げる効果があるのです。