農林漁業者向けの大型の官民ファンドが今秋、誕生する。そのための資金を農林水産省が300億円、2012年度予算案で組んだ。

農水省が大型ファンド創設<br />成否を決める運用者の選出

 同省と金融機関や商社などが共同出資で、「農林漁業成長産業化支援機構(仮称)」というファンド運営の株式会社を設立し、地域ファンドを通して、農林漁業者が経営する企業に出資。ファンドから経営コンサルタントなどを派遣して経営を支援する(上図参照)。

 農林漁業事業者と企業が共同出資し、事業が1次産業、2次産業、3次産業にわたる“6次産業”の会社が出資の対象。たとえば、薬草の栽培農家と製薬会社が折半出資して設立する漢方薬の製造・販売会社などだ。食品や再生可能エネルギー事業等も考えられる。「1次産業の生産額は約10兆円だが、2次産業や3次産業で価値が付加され、消費段階では100兆円規模になる。そうした付加価値段階に農林漁業者が参画して収益を取り込み、さらに輸出事業も起こし20兆円の価値を創造していく」と農水省では目論む。

 既存の補助金行政では、資金を出した段階で官の業務は終了するが、今回のファンド出資では、継続的に経営チェックや指導を行い、最終的には株を売却して出資金を回収する。

 予算300億円は財政投融資制度の産業投資で予算の単年度主義に拘束されず、投資期間は最長15年と長い。最大200社までの投資を狙う。

「従来の農政とは違う画期的な試みだ。だが、そのぶんリスクは大きい。投資先を決める目利きが重要だ」(あるファンド投資家)

 機構の運営者は、1次産業の事業に詳しい人と投資実績のある人の混成などを想定しているというが、その人選こそがファンドの成否を決めることになるだろう。

 (「週刊ダイヤモンド」編集部 大坪 亮)

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