立里荒神社の鳥居から本殿までは、急な山道の長い参道の坂が続きます。
怒っていた夫は、さっさと自分だけ参拝すると、そのまま私を残して坂を降りていきました。私はゆっくりと、山の上にある本殿へ参拝に向かい、歩きながらため息をつきました。
「困ったな。あの性格、どうにかならないかな……」
すると突然、頭の中に声が聞こえたのです。
『性格を変えるのは、人間のすることではない。
神の領域である。
お前は自分のやるべきことを淡々とやっておればよい』
それは、力強くダンディな声でした。立里荒神社に祀られている三宝荒神さまの声だと直感しました。
三宝荒神とは、古くから日本に存在する地主のような神さまで、「仏・法・僧」の三宝を守る守護神です。その守護神の声が、スパーンと頭の中に響いたのです。
それで、「ああ、荒神さまがそうおっしゃっているのだから、なんとかしてくださるんだ」と私は安心してお参りし、山を下りたのでした。
ご神仏の働きは、
驚くほど具体的に起こる!
その言葉の意味がわかったのは、帰宅後、夫婦でこのお参りの話をしていた時のことです。
夫が「コウジ……」と荒神さまの名前を言いかけると、急にゴホゴホと咳き込み始めたのです。持病だったぜんそくの大発作です。咳は止まらず、入院騒ぎにまでなりました。
最初の発作では、私も夫もそれは偶然の出来事だと思っていました。
しかしその後も、夫が荒神さまの名前を口にしようとするたびに咳き込み、同じことが起き続けました。どう考えても、荒神さまが関わっているとしか考えられません。
これには、目に見えるものしか信じないガチガチの唯物論者だった夫も降参です。
最後は、涙ながらに自分が悪かったと話し、手作りした神棚とお社で荒神さまを祀り始めたのです。この後は夫が荒神さまの名前を口にしても、不思議と咳き込むことがなくなったのでした。
夫は今、荒神さまはもとより、ご神仏も高野山も大好き人間に変わりました。
ご神仏は、これだけ具体的な出来事を起こして、私たちに働きかけてくれます。
「あの出来事が僕の人生の転機になった」と夫は当時を振り返り、「自分の体験が少しでも役に立てば」と、このエピソードを紹介することを快諾してくれました。
でも、三宝荒神さまが誰にでもこんな手荒なやり方をするわけではありません。
ちゃんと礼儀正しくお詣りすれば大丈夫です。
夫はとてもがんこだったので、身をもって体験しないとわからないと、きっと荒神さまが思われたのでしょう。
ご神仏が私たちを導く方法は、その人の性格や状況に合わせた「個別指導」です。
ご神仏は、どのような出来事があると私たちが自分の問題に気づけるのか、自分自身で悩みを解決できる力をもっているのかを知り尽くしていて、手取り足取り導いてくださります。
ですから、ご神仏は私たちにつきっきりで進むべき道を教えてくれる、スーパー家庭教師だと思ってください。
それも、どんなに「できない子」でも見捨てず、どんなにつらい時でも見放さず、最善の指導をしてくれるスゴ腕の先生なのです。
心から信じることによって、その力は大きくなります。