社会保障と税の一体改革批判(1)<br />6つの視点で改革を徹底検証する<br />――嘉悦大学教授 高橋洋一氏たかはし・よういち/1955年、東京都生まれ。東大理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。1980年、大蔵省入省。理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、総務大臣補佐官、内閣参事官などを歴任したあと、08年退官。09年政策工房を設立し会長。10年嘉悦大学教授。
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 24日から通常国会が始まる。今国会の最大の焦点は、「社会保障と税の一体改革」だ。では、「一体改革」は一体何なのとか検討してみると、その内容はオヤジギャグとでも言いたくなるような「社会保障と税の一体改革」だ。はじめのうちは、政府の本音が出て、「社会保障」と「税」の順番が今とは逆に「税」が先になったりしていたが、今や「社会保障」が先に来る順番が定着した。

 政府素案を見ると、「一体改革」なのに、先に書かれている社会保障の基本ともいうべき年金では、民主党が掲げる最低保障年金を柱とする年金制度さえ示していない。しかし、後に書かれている税では、消費税率の引き上げがスケジュールつきで明確に書かれている。

政治論、社会保障論から
みた問題点

 まず政治論から始めよう。最近インターネットで話題になっている野田総理の政権交代前の街頭演説の動画がある。それを見ると、「書いてあることは命懸けで実行する。書いてないことはやらないんです」といっているのが、YouTubeにある。この話は以前から有名で、国会でも野田総理は演説しているので、テレビビデオもあるだろう。

 政権交代時のマニフェストに書いていない消費税はスケジュール、税率まで決めておきながら、マニフェストに書かれている年金改革はまだでは、話にならない。