レースクイーンの廃止をF1が正式発表したことが、大きな話題になっている。というか、ネットではちょっとした炎上騒ぎとなっている。廃止の理由を、F1運営側は「大会のブランド価値や現代の社会規範にそぐわない」と言っているが、現代の社会規範にレースクイーンの存在がそぐわないのだとすれば、事はモータースポーツ界だけの問題ではない。
F1に限らず、多くの企業のプロモーション活動において、「若くてセクシーな女性」は起用されてきたし、いまでも多くの企業・商品プロモーションで活用されている。つまりこの問題は、F1ファンやレースクイーンのファンだけの問題ではなく、多くの企業人に突きつけられた課題だと言えるのだ。そこで今回は、現代社会において企業は「若くてセクシーな女性」とどう向き合うべきかを考えてみたい。
運営側がレースクイーン廃止を
決めた理由とは
ところで、冒頭で「F1がレースクイーンの廃止を決めた」と書いたが、正式にはレースクイーンではなく、「グリッドガール」の廃止である。ファンの間では、グリッドガールとレースクイーンは別モノという意見も多い。たしかに日本でレースクイーンと言えば、一般の人たちのイメージでは、レース場で水着のような露出度の高い衣装を着て、レースを盛り上げている女性たちといった程度の理解だろう。
実際にレースクイーンは、レース場でドライバーを日差しや雨から身を挺して守ったり、ファンにオリジナルグッズを手渡したりと、レース場でレース関係者やファンに対するさまざまな支援サービスを提供している。また、撮影会を開くなど、ファンとの交流も積極的に行っている。また、彼女たちの雇用主は、それぞれのレーシングチームである。ちなみにレースクイーンは日本だけの呼称のようで、韓国にも似たような役割の女性たちがいるが、こちらは「レーシングモデル」と称されており、役割としては日本のレースクイーンと同様のようだ。
これに対してグリッドガールは、レース前のグリッドにおいて、ドライバーの名前やスポンサー名を書いたボード(プラカード)を観客に向けて掲げて立つことがメインの仕事。雇用主もチームではなく、レース主催者だ。衣装も日本人の多くがイメージするような露出度の高いものではなく、レース開催地の民族衣装だったりもする。
このようにレースクイーンとグリッドガールでは、その目的も内容も違いはあるが、一般の人にとっては、その違いにこだわることはあまり意味のないことだし、レースを盛り上げる役割という意味では大きな違いはないので、本稿では便宜的にレースクイーンとして論じる。
今回のレースクイーン廃止の報道を受けて、ネットでは「フェミニスト(女性団体)の圧力でレースクイーンが廃止に追い込まれた」とする投稿も多数見られるが、どこかの団体の抗議によって廃止が決まったという証拠はない。F1運営側は、そのような「女性団体から抗議を受けた」とは語っていないし、どこの女性団体も勝利宣言みたいなものは発表していない。