論文を読むのが日課という「めんどくさいお医者さん」、東京大学病院・地域医療連携部の循環器専門医、稲島司先生。彼は医学的な調査、科学的な証明を論拠に「健康」を考え、逆に、論拠なき「健康イメージ」を撲滅せんとする人物だ。今回は彼自身の食習慣を教えてもらった。(経済ジャーナリスト 夏目幸明)
食事改善はまず朝食から
夕食は比較的自由でもOK
夏目 というわけで先生の提唱してる食習慣を取り入れたいんですよ。私、生活が不規則で、夜も飲みが多くて、しかも独身でしょ?なんかの調査で、独身男性は既婚男性に比べ早死にするって読んだこともあるんですよね…(※大阪大学、2007年。40~79歳の男女9万64人について、10年間にわたり婚姻状況とその後の死亡との関係を追跡調査。独身男性は既婚男性に比べて循環器疾患で3.1倍、呼吸器疾患で2.4倍、外因死〈事故や自殺〉で2.2倍の死亡率となる)。
先生は最近、「医師が実践する 超・食事術」という本を出版されましたが、健康になれる食生活って結局、どんなもんなんでしょう?
稲島 健康的に長生きできる食事を続けると、なんと見た目の改善も期待できそうなんです。私はまず「無理せず朝食だけ変える」ことをお勧めします。食事は楽しむことも大切だから、夕食は比較的自由に、でも朝食は習慣化しやすいから改善してみましょうという提案です。そして、まず摂ってほしい食品その1は「ナッツ」なんですね。
夏目 あ、ピーナッツとか?
稲島 素晴らしい間違いです。私は以前から、ピーナッツは「ピービーンズ」と呼ぶことを推奨しています。名前に「ナッツ」とあるから紛らわしいんですが、ピーナッツはナッツではなくマメ科です。ただ、「ピー」は豆の意味らしいので、ピービーンズだと豆豆になってしまいますが…。
夏目 相変わらず細かいところにこだわりますね。
稲島 一方、ナッツは主に木の実のことで、よく見かけるものだとアーモンド、くるみ、ヘーゼルナッツなどを指します。長生きしたいなら、これを毎朝食べてほしいんですよ。ちょっと見てください。直腸癌、子宮体癌、そして星野仙一氏の訃報でも話題になった膵臓癌もリスクが減るようです。
そしてコレステロール値も改善して、心臓病による死のリスクも減少しています。(参考論文:Public Health Nutrition2009;13,1581、JAMA Intern Med. 2015;175:755 )