「孤独死」の約7割が男性、いつか訪れる死の現実男の一人暮らしは、栄養面や衛生面など生活の質が落ち、酒に溺れるケースもある。特にアルコール依存症の場合、孤独死に至りやすいそうだ(写真はイメージです)

在宅死の半数が
孤独死である

 著者はベストセラー『「平穏死」10の条件』などの著書をもつ医師だ。病院で1000人、在宅で1000人以上を看取った経験から、在宅で死ぬ方が「平穏死」できると訴え続けてきた。近年、増加の兆しがでてきた在宅死。実はその約半分を占めるのが、孤独死である。そして本書『男の孤独死』は、さらにその約7割を占める「男の孤独死」に焦点を絞った本邦初の本である。

「孤独死」の約7割が男性、いつか訪れる死の現実『男の孤独死』
長尾和宏、ブックマン社、224ページ、1300円(税別)

 それにしても、身につまされるタイトルではないか。思い当たるフシはたくさんある。俗に、夫に先立たれた妻は長生きするが、妻に先立たれた夫は後を追うといわれる。男の一人暮らしは、栄養面や衛生面など生活の質が落ち、酒に溺れるケースもある。一人暮らしのアルコール依存症の男性は、孤独死に至りやすい典型なのだそうだ。

 また、見落とされがちだが、菓子パンなどでブドウ糖依存になり、糖尿病そして認知症になって、孤独死というケースも多いという。さらに、タバコ依存にはガンや火事などのリスクがつきまとう。人生に楽しみは必要だが、孤独死を避けるために依存症になるのを絶対に避ける必要があると、著者は警鐘を鳴らしている。

 そう、何事も適度に楽しみたい。私も、いつも心がけている。しかし先日、背筋が凍る出来事があった。妻が車窓から競馬場を眺めながら、「パパはこの近くで、一人で趣味の老後を迎えるらしいよ~」と子供たちに囁いたのである。その時、「孤独死」という言葉が私の脳裏をよぎった。そこで現実を知りたいと思い本書を開いた。しかし…

“孤独死に関する全国統計はありません。明確な定義がないからです。ただ、いくつかの組織が特定の地域内などの部分的な統計を出しています。  ~本書より