直後の会見では4回転ジャンプの練習を再開したのは2週間ほど前と明かしたが、それでこれだけのジャンプを跳べるのは、さすが世界トップの実力者だ。また、「不安要素はない」、「クリーンに滑れば絶対勝てる」と言いきった。

何度もアクシデントを
切り抜けた強いメンタル

 羽生は強い精神力の持ち主だ。これまでも直前にアクシデントに見舞われながら好成績を収めてきたことが何度もある。2014年の中国杯ではフリーの直前練習で他の選手と激突し、あごと額を切る大ケガを負ったが、テーピングの応急処置をして出場を強行し、2位になった。16年の世界選手権でも左足関節靭帯を痛めながら2位。昨年9月のオータムクラシックでは大会前に右ヒザを痛めていたが、ショートプログラムで世界最高点を記録し優勝した。アクシデントがあっても動揺することなく、痛みさえも克服して最高レベルの演技を見せる強さを持っているのだ。

 とはいえ今回は五輪の大舞台。ライバルたちはここに照準を合わせて練習と試合を重ね、調子を上げてくる。いくら世界一の実力者で強い精神力を持っている羽生であっても、わずか3ヵ月前に大ケガをし、2ヵ月ものブランクを経て練習を再開したばかりでは「大丈夫だろうか」と思われるのも当然だ。

 不安なのは試合勘とスタミナだ。フィギュアに限らず競技は練習と試合では選手にかかる負荷が全然違う。試合は練習通りにいかないことは多く、試合から遠ざかりぶっつけ本番というのはやはり不安が残る。また、ショートプログラムは約2分40秒で終わるが、フリーは約4分30秒演技を行なう。フィギュアは華麗な見た目からは想像もつかない過酷な競技で、演技中は全力疾走を続けているのと同様の負荷がかかるといわれる(陸上競技で3000mを走るのと同じという説もある)。試合を重ねていれば体はそれに順応し耐えることができるが、練習を再開して1ヵ月ほどでスタミナが保つかは気がかりだ。