サークルKサンクスは年内に、関東で展開している、他行預金者でも引き出し手数料無料のATMサービス「ゼロバンク」を取りやめる模様だ。

 ゼロバンクはサークルKサンクス向けのATMサービスの名称で、ATM台数は約2600台に上る。

 東京・神奈川・千葉・埼玉は東京スター銀行、愛知・岐阜は大垣共立銀行、三重は三重銀行が展開している。

 その内、東京スター銀行のATM約1100台を、今夏から年内にかけて順次、りそな銀行を幹事行とする「バンクタイム」に切り替えていく。これにより、東京スター銀行は店外ATM約2100台の半数を失うことになる。

 東京スター銀行のコンビニATMでは三菱東京UFJ銀行のカードが使えず、コンビニ利用者からの不満が少なくなかった。

 その背景には、ゼロバンクの仕組みを巡る両行の対立がある。

 そもそも銀行間では顧客の利便性を高めるため、ATMの相互利用契約を結んでいる。

 例えば、A銀行の預金者がB銀行のATMでカネを引き出した場合、利用者はB銀行に対して一回当たり105円の手数料を支払う。それと同時にA銀行もB銀行に105円の手数料を支払う。つまり、B銀行は、ATMを提供した対価として、合計210円を受け取っている。

 ところが、東京スター銀行は、他行の預金者の引き出し手数料を無料にし、他行からの手数料105円だけを得る仕組みとした。受け取ったカネをATMの運用委託先である富士通に支払うことで、コストをかけずにATM設置台数を増やしたのだ。

 しかし、多くの預金者を抱える三菱東京UFJ銀行からすれば、東京スター銀行のATM利用者が増えることで支払いばかりが膨らんでしまう。東京スター銀行へ支払う手数料は年間約6億円に上った。

 ちなみに大垣共立銀行、三重銀行は今も三菱東京UFJ銀行のカードを利用できる。例えば大垣共立銀行では他行からの手数料を21円に引き下げるなどの条件変更を行ったからだ。

 業を煮やした三菱東京UFJ銀行は08年11月、東京スター銀行とのATM相互利用契約を打ち切った。これに対し、東京スター銀行は、独占禁止法に違反するなどとして、取り引き再開や損害賠償を求めて東京地方裁判所に提訴した。

 しかし昨年12月、東京高等裁判所への控訴を取り下げたことで、東京スター銀行の請求を棄却した一審判決が確定した。

 両行は今後、取引の再開に向けた協議を開始する可能性もあるというが、「現時点では全く話し合いは行われていない」(三菱東京UFJ銀行)。

 大手コンビニ各社は、公共料金や保険料の支払いなどの店頭サービスを拡充して集客力を強化している。中でもATMは重要なサービスの一つだ。

 三菱東京UFJ銀行のカードが使えない状況については、「顧客とフランチャイズ加盟店に迷惑をかけており、解決すべき重要課題の一つ」(中村元彦・サークルKサンクス社長)だった。

 両行の争いが終結したことで、ようやく懸案は解決する。だが、ここまでに要した時間は3年超。サークルKサンクスにとって、東京スター銀行と組んだ代償はあまりに大きかったと言える。

(注:デイリーヤマザキの店内ATM(81台)は今後も継続予定)

(「週刊ダイヤモンド」編集部 松本裕樹)

週刊ダイヤモンド