今夏、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)と東京スター銀行のあいだで火花が散ることになりそうだ。

 MUFGは東京スターに対して8月下旬にも、ATMの相互利用契約の解除通告を行なう模様。契約解除となれば、MUFGのキャッシュカード保有者が東京スターのATMを利用できなくなる。

 東京スターは2006年7月にサークルKサンクスと提携し、他行のキャッシュカード保有者でも預金の引き出し手数料が無料(平日昼間と土曜の一部)という「ゼロバンク」サービスを展開。東京スターの自社ATMは約2600台に上っている。

 だが、業界内では「“他人のふんどし”で儲ける行為」と、東京スターを批判する声が上がる。これはどういうことか。

 通常、A行のキャッシュカード保有者が平日昼間にB行のATMで預金を引き出す場合、顧客は105円の手数料を取られる。このとき、A行もB行に対して、105円の銀行間手数料を支払うため、B行からすれば、合計210円のATM手数料収入が得られる。

 ところが東京スターは、引き出し手数料を無料にして他行の顧客による利用を増やすことで、銀行間手数料を増やした。つまり他社の顧客という“ふんどし”で儲けているというわけだ。

 じつは2年前にもMUFGは東京スターに対して解除通告を行なっている。だが、当時はMUFGの自社ATMが少なく、また、顧客への利益還元を求める声が強かったため、契約解除には至らなかった。

 MUFGはその後、コンビニ等のATM利用手数料を無料化。それらを含めた平日昼間無料のATM台数は9000台から約4万台に増えた。それゆえ、東京スターとの契約を解除しても自社顧客への影響はないと判断したようだ。

 今後、東京スターは、契約解除か、銀行間手数料の大幅な引き下げを迫られることになりそうだ。MUFGは東京スターに対して、年間4億~5億円の手数料を支払っていると見られる。MUFGへの対応次第で、他の銀行が追随する可能性もある。そうなれば、東京スターは事業モデルの練り直しを求められることになる。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 松本裕樹)