体格に恵まれていたわけでもない。誰もが認める豪速球があったわけでもない。注目の高校球児だったわけでもない。天才的なセンスや嗅覚があるわけでもない──。そんな「ふつうの野球少年」はなぜ、東京六大学野球奪三振記録、新人王、MVP、最多勝、最高勝率などの記録を打ち立てられたのか。球界随一の「思考派」と呼ばれる、福岡ソフトバンクホークス現役エース・和田毅が「練習について」のすべてを語る。(構成/田中周治、写真/繁昌良司)
練習を習慣化できる強み
「練習がイヤになることはないんですか?」
そんな質問をされることがときどきある。たしかにプロ野球選手と練習は切っても切り離せないだろう。練習とは、現役選手を続ける限り、毎日やり続けるのが当たり前のこと。特別に意識せずに行っている日課と言ってもいいだろう。
朝起床して顔を洗う。食事をして歯磨きをしてお風呂に入る。僕の場合、そういう毎日必ず行う日課の中に、練習も並列して入っているのだ。洗面所に立つたびに「うゎっ!! また歯を磨くのか…」と身構える人は、まずいないだろう。僕の練習に対する意識も同様だ。「うゎっ!! 今日は肩のトレーニングなんだ…」とはならない。「今日は肩のトレーニングね」「明日は体幹か」と思うだけ。僕の中では、練習はそんなふうに習慣化されている。