課題文の主張を「出発点」に
自分の考えを明確にする
低評価の解答例の問題点は、「課題文を無視している」ことに尽きます。筆者の意見とはまったく関係なしに、「格差の解消のため行政は主導的な役割を果たしていくべき」ということを論じています。課題文が主張しているのは、そもそも「格差はあっていいのだ」ということです。これについてどう考えるのかを書かなければならないのに、その点がまったく書かれていません。
言い方を換えれば、低評価の解答例は「課題文を読まなくても書ける」答案です。
それは課題文を無視していることと同じですから、大幅に減点されます。
たとえば「格差はあるべきでなく、社会は平等であるべきだ」と、筆者の主張を全面的に否定する。
「格差があることで人は頑張ろうとするのだから、格差があること自体は悪いことではない」と筆者の意見に同調する。
あるいは「ある程度の格差はやむを得ないが、今の日本の格差は行き過ぎている」のように、部分的な同意にとどめる。
いろいろなアプローチが考えられますが、いずれにしても、「課題文を出発点にして」論じなければならないのです。もし、今回の問題が「格差社会についてあなたが考えることを述べてください」であれば、何も前提条件がついていないため、低評価の解答例も合格答案かもしれません。
しかし「次の文章を読み」と指示されているのですから、筆者の意見を出発点にしなければ、そもそも解答として成立しないのです。
多くの人は、「格差社会」というキーワードに飛びついて、自分の知っている言葉を安易につなぎ合わせて答案を書きます。そうではなくて、まずは出題の指示がどうなっているのかを見るのです。
次のような思考プロセスを踏むのが、正しいやり方です。
(1)「次の文章を読み、筆者の意見についてあなたが考えたことを述べてください」という問題文を見る
↓
(2)『課題文を読んだ上で、何を考えたか』を聞いているな。まずは、課題文は何を言っているのかを把握しよう
↓
(3)課題文の内容は「格差があるのは当然だ」という趣旨だ
↓
(4)
では、この主張に対して自分はどう考えるだろう?格差はあっていいのか?そうではないのか?
この(2)以降を飛ばして、課題文の「格差社会」という言葉だけに注目し、「格差社会について書く問題か。だったら『世代間の連鎖』や、『奨学金の充実』のキーワードを使って書けばいいだろう」などと短絡的に結論を出そうとするから、ミスを犯すのです。
では、「課題文に対する自分の意見」を明確に書くためには、どんな方法があるでしょうか。