日経平均が下がり続けているこの10年、「日経平均株価」ではなく、上場している会社全体を見れば、実は57%が株価を上げていた!
「いい銘柄」を見つけて売買し、ものすごいリターンをあげ続けているカリスマファンドマネジャーの藤野英人さん。現在の日本株市場における日経平均株価の「死角」と、インデックス投資の「弊害」を語ってもらった。(全5回連載)

日経平均はこの10年で1000円も下がった!
しかし、この指数の「中身」をよく考えてみよう

 まず、皆さんにクイズを出したいと思います。

 2001年9月末(28日)の日経平均株価は9775円でした。その10年後、2011年9月末にはそれが8700円。日本の全上場企業を、同様に比較した場合、株価が上昇した企業は何%あると思いますか?

 日経平均が10年間で1000円以上も下落しているわけですから、上昇している銘柄は少ないと思われる方が多いのではないでしょうか。私は最近この質問を何人かの株式市場関係者にしてみましたが、10%とか20%という答えの人が多く、高い人でも30%という答えでした。

 しかし、正解は、なんと57%です。

 上昇したのは2618社中1493社と半分以上の会社の株価が上がっているのです。さらにこの内訳を見ると、面白いことがわかります。2001年9月の時点での時価総額で、3000億円以上の大型株と3000億円未満の中小型株に分けて計算すると、上昇した銘柄1493社のうち3000億未満が96%を占めています。

 日経平均株価というのは日本を代表する大企業225社の株価の平均で、ざっくり言えば、全上場企業の上位10%の企業でほぼ占められています。

 また同様にTOPIX(東証株価指数)も全銘柄の加重平均であり、時価総額の大きな大型株の値動きによって支配的な影響を受けます。

 つまり、私たちが普段ニュースなどで目にしている日本の株価指数というのは、大型株の値動きによって左右される指数であり、これらの株価指数が低迷している原因は、ひとえに大型株の不振によるところが大きいのです。

 このことから、現在の日本では、上場企業の半分以上は上昇しているのに、株価指数は大きく下落してしまうという現象が起きていることがわかります。日経平均株価やTOPIXを見ているだけでは、相場全体のことはわからないと言えるのではないでしょうか。

もう「日経平均は死んでいる」
インデックス投資は危ない!?

 私が最近思うのは、これからの投資を考えた場合に、本当にインデックスの投資信託を積み立てる投資で大丈夫なのか、ということです。

 今、いわゆるインデックス運用が花盛りです。インデックス運用というのは、日経平均連動型の投資信託やTOPIX連動型投信など、株価指数への連動を目指す運用のことで、市場の平均的な成績を狙おうというものです。

 それに対して、積極的に良い銘柄を探して投資し、高い運用成績を目指す投資法をアクティブ運用といいます。

 プロである機関投資家、いわゆる年金運用や生命保険会社の運用はもちろん、個人投資家にも、今は「インデックス投資」偏重の動きが広がっています。書店の資産運用のコーナーに行っても、インデックス投資の良さを主張する本ばかりが目立ちます。

 しかし、残念ながら、TOPIX連動投信や日経平均連動投信の成績はこの10年をとっても、この20年をとっても振るいませんでしたし、この先10年も受難の時代が続く可能性があります。もう少し詳しい理由は、拙著(「日経平均を捨てて、この日本株を買いなさい。」)を読んでいただくとして、やや過激な言い方ですが、もう既に「日経平均は死んだ」と言えるのではないか、と思うのです。

「死んだ」という言葉にはいくつかの意味があります。一つは、日経平均が日本の経済や株式市場の実態を正しく映し出さすものでなくなってしまった、ということ。そして、日本経済の再生している面よりも衰退している面ばかりを映し出す指標になってしまった結果、今後もあまりパフォーマンが期待できなさそうだ、という意味です。なぜかというと、日本経済は成熟し、全体として右肩上がりという時代ではなくなっているからです。