本連載では、話題の新刊『最先端科学×マインドフルネスで実現する 最強のメンタル』の内容から、エビデンスに基づいた最新科学の知見をもとに、現代人が抱える2大メンタル問題「ストレス」と「プレッシャー」を克服し、常に安定して高いパフォーマンスを発揮するための方法をお伝えしていく。

精神的なストレス「頑張る系ストレス」

 連載第11回では、「頑張る系ストレス」と「我慢系ストレス」の2つのストレスの1つ、「頑張る系ストレス」について、解説していきたいと思います。

 頑張る系ストレスは、いわゆるタイムプレッシャーで、ビジネスパーソンであれば書類などの締め切り、アスリートであれば試合における制限時間、受験生であれば試験の制限時間などにあたります。

 制限時間が設けられると、いつもは解ける問題がまったく解けなくなってしまった体験をされた方も多いと思います。

 元々、日が昇っては沈むというサイクルの中で生きてきた我々人間は、急速に発展した文明によって、動物としての機能だけが進化できずに置いてきぼりにされている状態なのです。

 つまり、時間に対するプレッシャーにはあまり強くできていないのです。

 ですので、シリコンバレーで分刻みのスケジュールに追われる多くのビジネスパーソンたちは心身を病み、その回復手段としてマインドフルネスを行っているのです。

 こうしたタイムプレッシャーの中で高いパフォーマンスを遂行しないといけないストレス状況が頑張る系ストレスの特徴です。

 タイムプレッシャーの中で「今」に集中する

 頑張る系ストレスのトレーニングでは、制限時間内に課題のクリアを目指しつつ「今」に集中することが求められます。制限時間という未来に意識が向かいがちな状況において、いかに「今」に集中することができるかがカギとなります。

 交感神経が活性化した状態で課題の遂行を目指すことで、交感神経系ストレスに強くなります。

 それでは、頑張る系ストレスに対するトレーニングをご紹介します。具体的には、タイムプレッシャーを与え、その状況で冷静に高いパフォーマンスを発揮することを目指します。

 これは例えば、「いつまでにこの仕事を終える」などのタスクを自分自身に与え、その時間内にクリアすることです。制限時間を設定すると、人は自然と締め切り時刻に合わせるようにその作業を終わらせようと調整します。

 つまり、2時間以内に終わらせようと考えれば、2時間かけてその作業を完了しようとし、同じ作業量であっても1時間以内に終わらせようと思えば、1時間かけて完了しようとするのです。

 これは、ビジネスやコーチング分野でもよく耳にするパーキンソンの法則と呼ばれるものです。現在、長時間労働が問題となり、都庁でも「20時完全退庁」とのスローガンが掲げられていますが、そう宣言した方が、その時間内に仕事をこなすことになり、結果、生産性が上がると考えているのですね。

 こうした人の行動特性と直接結びつくかどうかはわかりませんが、近年の研究により、私たちの身体の中には、体内時計とは異なるタイマー時計と呼ばれるものが存在していることが明らかになりつつあります。

 「明日6時に起きなくては!」と思って眠れば、覚醒に関わるホルモンであるACTH(副腎皮質刺激ホルモン)が、その時刻に合わせて分泌され始めるのだそうです。

 つまり、普段9時に起きている人であれば、いつもの分泌のタイミングよりも早い段階でACTHの分泌の増加が確認されたのです。実際、次の日に大事な用事があり、「明日起きられるかな?」と心配しながらも、予定の時刻よりも早くに目覚めた経験はないでしょうか?

 いずれにしましても、人の習性上、一度、制限時間を設定したならば、いったんそのことは忘れ、あとは目の前のタスクにただ没頭することです。制限時間を設けたことにより「結果」に過剰な意識が向かってしまっては、扁桃体の活性によるストレス反応が起きてしまいます。

 これでは、制限時間内に仕事は終えたとしても、心身共に疲弊してしまいます。

 1日だけならまだしも、そのような日が続けばストレスとなり、やがて、うつ病を発症してしまうリスクを含んでいるといえます。

 重要なことは、制限時間を設定したなら、いったんそのことは忘れ去り、目の前のタスクに没頭することです。

 そして、次に重要なことは、タスクを行っている間は、常に呼吸の乱れや、眉間、肩の緊張に意識を配り、緊張を感じたならば、すぐに緩め、再度タスクに没頭することです。

 マインドフルネスは気づきという意味であり、自分自身の心身の変化に気づくことが大事なのです。たとえ、制限時間が気になり、焦りだして力みが出てきても、それらの感情に振り回されることなく、再度タスクに没頭するようにしてください。

 はじめは、なかなかうまくいかないと思いますが、人間にはストレスに適応しようとする本能が備わっています。このトレーニングの繰り返しにより、次第に「今」に没頭できるようになっていきます。