巨大資金を持つ外国人投資家たちが、日本株を買っている…。また、今後、先進国がデフレに突入するときに台頭する企業とは? 日本株のカリスマファンドマネジャー藤野英人さんに、外国人投資家の日本株の評価などを聞いた。

アブダビ、ノルウェーなど巨大な資金を持つ
国家ファンドが日本株を買っている!

 みなさんは世界最大規模の資産を動かす投資家をご存じでしょうか。

 金額の規模で第1位がアラブ首長国連邦のアブダビ投資庁です。さらに2位はノルウェー政府年金基金、3位はシンガポール投資公社という、政府系の投資ファンドが上位を占めています。

 実はその世界1位のファンドの運用責任者と、2位のファンドの運用責任者は、ともに日本株に注目しているのです。

 アブダビ投資庁はアラブ首長国連邦の国家ファンドであり、2011年現在日本円にして約70兆円もの資金を運用しています。

 先日、そのCIO(最高投資責任者)のジョージ・スダスキスさんとお会いする機会があり、じっくりお話したのですが、彼は日本のことを大変評価しており、中長期的に日本株を買い増していきたいと話をしていました。

 スダスキスさんは、日本に関して「食事がうまい、水もうまい、四季もある。ウチの国にはないものばかり」と文化や風土を絶賛し、さらに「高い技術力もあるし、お金もたくさんある」と経済的な潜在性も高く評価しています。

 彼は70兆円という巨大ファンドの運用責任者として世界各国を投資対象としてウォッチし続けており、日本のこともかなり熱心に研究していました。

 「日本には今、ソーショクメイル(草食男子)が増えているそうじゃないか!」と言われたときには、そんなことまで知っているんだとびっくりしました。

 そして彼は「もっと日本人はニクショク(肉食)系になって、世界中に物を売ってまわらないとダメだ。日本人さえやる気になれば、日本の製品は世界中で売れるのに。日本人に足りないのは、やる気だ!」と言います。

 ちなみに「ミスター柳井はニクショク系ですネ」と、ユニクロを世界展開するファーストリテイリングの柳井社長を、彼は高く評価しています。

「日本は必ず復活する」という
世界第2位ファンド運用者の言葉

 さらに、国家ファンドとして世界で2番目に大きく、日本円にして約45兆円の資金を運用するノルウェー政府年金基金も、同様に日本株への投資に積極的な姿勢を見せています。同基金はすでに日本株に3兆円近く投資していますが、この基金を運用するノルウェー中銀インベストメント・マネジメントのCEO(最高経営責任者)であるイングヴ・シュリングスタさんは、日本株投資をさらに増額したいとマスコミを通じて言っています。

 シェリングスタさんは2年間日本に留学した経験もあるという筋金入りの日本通です。若いころに4年かけて世界中をバックパッカーとして旅したシュリングスタさんは、世界の国々を見る中で日本の特異性に衝撃を受け、留学することを望んだというのです。

 その彼が「日本は必ず復活する、そして、その高い潜在能力を再び発揮するはずだ」と、日本株への投資を続けています。日本の文化を深く理解し、評価しくれている人が、世界で第2位の投資ファンドのCEOであるというのは、日本人としては頼もしいといえるのではないでしょうか。

 このふたりのほかに、私が世界中の様々な投資家と意見交換してきた感触としては、日本人自身が日本株に対して悲観的なのに対して、外国人投資家による日本株の評価は高いということです。

 もちろん、すべての外国人投資家が日本に対して楽観的なわけではありません。外資系金融機関の間で、日本株投資からの撤退、日本での事業規模を縮小するという動き出ていることも事実です。

 しかし、どちらかというと、現時点で日本に対して悲観的なのはヘッジファンドなど短期売買をしている外国人投資家であって、長期投資をしている投資家たちの日本株への評価は総じて高いように思いますし、私自身、今後の日本株には大きな可能性があると判断しています。