「子ども手当」が揺れに揺れている。昨年の三党合意により、子ども手当は廃止され、今年4月からは改正児童手当法が施行されるはずだった。しかし、先頃与党は「子どものための手当支給法案」を閣議決定し、今国会での成立を目指している。児童手当法を改正する形をとっているものの、三党合意を事実上骨抜きにし、あくまで「子ども手当」のイメージを踏襲しようとする与党に対して、野党の猛反発は必至だ。もし同法案が今国会で成立しないと、今年4月以降は旧児童手当が復活する。そこで気になるのが、新・子ども手当と児童手当のどちらがよりメリットが大きいかだ。様々な試算によると、ケース・バイ・ケースではあるが、得をしないばかりか、負担が増す家庭も少なくないという。日本の子育て支援政策は、なぜここまで迷走を続けているのか。制度の問題点を探り、不安を抱える子育て世帯の声を聞いた。(取材・文/友清 哲、協力/プレスラボ)

子どものための手当支給法案?
迷走の度合いを強める子育て支援政策

 今年度末で期限が切れる子ども手当。民主党はそれに先立ち、新たに「子どものための手当」(以下、便宜上「新・子ども手当」と記述)を導入する「子どものための手当支給法案」を閣議決定し、今国会での成立を目指すこととなった。

 そもそも子ども手当は、民主党が歴史的大勝を収めた2009年の衆院選で、「子ども1人あたり月2万6000円支給」というマニフェストを掲げたことに端を発する。いわば、政権交代の象徴とも言える肝いりの“政策”だけに、民主党はこの政策に並々ならぬ執着を見せた。

 しかしこの制度、もともと懸念されていた財源問題が浮き彫りになり、結局は半額(1万3000円)支給でスタートを切った。その時点で、「まさか、絵に描いた餅をあれほど堂々と公言していたとは、呆れるほかない」(40代・男性)などと、政府のいかにも場当たり的な対応を批難する声は大きかった。

「場当たり対応」はその後も続いた。政府は昨秋、失効を迎えた子ども手当のつなぎ法を延長した。このとき、2011年10月から今年3月までの支給額は、3歳未満と3~12歳の第3子以降が1万5000円、3~12歳の第1子、2子と中学生については1万円となった。2011年4月からは、当初マニフェストで公約したとおりの2万6000円を支給する予定だったにもかかわらず、である。