自分の感情を出せば、
他人の観念に左右されない

断捨離セミナーには、「モノが捨てられない」ことに起因する悩みを抱えてさまざまな方が来られますが、その中の1人、早智さん(仮名)がとりわけ深い悩みを抱えていることは、その暗い表情からも読み取れました。

「亡くなった息子が遺したモノを捨てられなくて苦しいのです。大きなモノはなんとか手放せたのですが、そこから先がどうにも進みません。いつまでも悲しんでいてはいけないから、早く処分して前に進みたいのですが……」

ところが、その言葉にはどこか違和感があったので、「『いつまでも悲しんでいてはいけない』というのはあなた自身の思いですか?」と私が尋ねると、早智さんは首を横に振ります。

じつは、そんなことを言っているのは、周りの人たちで、早智さん本人はまだ悲しみでいっぱいだったのです。

そこで私が「どうか思い切り泣いてください。悲しみを封じ込めないで」と言うと感極まった様子でした。

早智さんの1歩も進めない苦しさは、捨てられないからではなく、自分の感情に許可を出していないことに起因します。

一見善意からくる他人の観念に無意識に同意しようとして、辛い思いをしていたのです。

私は早智さんに、他人の観念ではなく、自分の素直な感情を自分自身で見つめることがいかに大切かをアドバイスしました。

自分に蓋をしていた感情を、まず出すこと。

どれだけ時間がかかってもいいから、感情を出し切ってはじめて、早智さんは新たな1歩が踏み出せるのです。