Rule5
相手のペースで聴き、自分のペースで話す
日本人が「シンプルな英語」を使いこなす上で、ひとつ大切なポイントがあります。それは、以下の点です。これはゴールドマン・サックスの上司も実践していました。
相手が話をするときは、冷静に相手のペースで聴く
自分が話をするときは、堂々とこちらのペースで話す
英語を話すスピードやリズム、論理構成、発音やアクセントなどは、人それぞれです。相手の話す英語にこちらが注文を付けることはできません。早口でまくしたてる人がいれば「ゆっくり話してほしい」と伝えることもできますが、会議の場などでいちいち発言をさえぎって注文を付けるのは現実的ではありません。
だらだらと話をする相手がいれば「結論は何?」と尋ねればよいですが、聴き手としても「結論は何なのか」と一定の思考をめぐらす必要もあるでしょう。
あらゆる発音を聴き取る力が必要
アクセントがきつい英語も、聴き取れない場合は聞き返すことはできますが、毎回話をさえぎることはできません。仮に聞き返したとしても、相手のアクセントはその場で大きく改善されることはなく、同じように聴こえるだけでしょう。
そのため、過度な早口、行き過ぎた「だらだら」発言、極度のアクセントをのぞけば、多国籍のチームが参加する会議の場では、それぞれの発言者の英語をしっかり聴き取り、その内容を理解するだけの英語のリスニング力と言語の理解力が必要なのです。
後に詳述しますが、英語のリスニング力は、正しい練習を積み上げれば、限りなく高めていくことが可能です。つまり、英語を「聴く力」、そしてその裏側にある「読む力」は、ネイティブレベルに近づいていくことは可能なのです。
相手のペースで話さなくてもいい
一方で、自分たちが話をするときはどうでしょうか。
やはり、ネイティブスピーカーと同じスピードで英語を発信することは、現実的には難しいものです。私たちが使える語彙や表現にも限界があります。さらに、発音もネイティブスピーカーレベルに到達することは不可能であり、日本人のアクセントはある程度は残ります。
よって、私たち非ネイティブが目指すべきアウトプット力(話す、書く)は、現実的なレベルにゴールを設定する必要があります。それがこの本で提案する「シンプルに伝える英語」なのです。
インプットは相手のペース、アウトプットは自分のペース。このことを、サッカーの国際試合にたとえてみると、以下のように表現できそうです。
アウェイの試合は、相手のペースで引き分けにし、勝ち点1を確保する
ホームの試合は、自分のペースで勝ちにこだわり、勝ち点3をもぎ取る
日本代表チームが相手国で行なうアウェイのゲームでは、時差、気候、食事などが日本と異なり、自分たちのペースで試合に臨むことは難しいものです。このような環境では、冷静さを保ちながら、なにより「負けない試合運び」が大切です。
一方で、日本に相手国を招いて行なうホームの試合では、万全の体制で臨むことが可能です。しっかり自分たちのペースで試合を運び、勝利をもぎ取りましょう。
日本人は英語を話すとき、ついついネイティブスピーカーのスピードにつられて早口でしゃべろうと慌ててしまいます。そこで、しっかりと自分のペースで英語を口に出す必要があります。だらだらと話の長い相手との議論であっても、こちらの発する英語は、まず結論から語る。そして、かならず理由を述べる。
そのとき、自信をもって、ゆっくり、堂々と、大きな声で、英語を話す。気の利いた小難しい英語表現を使う必要はありません。なるべく、中学高校で習ったことのある、簡単な英語表現を使うこと。日本語アクセントの残る発音だからといって気にする必要もありません。
point 相手のペースに飲まれる必要はない。マイペースで話そう