厚労省では、労使の代表が参加して労働法制を審議する「労働政策審議会(労政審)」で、裁量拡大などの議論をスタートさせたが、実態調査はその議論の土台となる基本的なデータとして、厚労省が労政審に示したものだった。

 労政審では、労働側から「長時間労働を助長する」と猛反発が出たものの、厚労省は法案提出を既定路線とする政権の方針をなぞるように、法案作成で押し切った。

 政権は15年4月に裁量拡大を盛り込んだ労働基準法改正案を閣議決定して、国会に提出している。

 連合を支持母体とする民主党(当時)は当然のように猛反対し、党の厚生労働部会に、厚労省の担当者を呼んで法案の内容を追及していた。

 部会では、裁量労働制で働く人と一般労働者の実労働時間を比較するデータが必要ではないか、という議論が盛り上がっていた。

 そこで厚労省は15年3月26日の民主党厚労部会に、比較データを記載した資料を提出した。これが今回、問題となった「不適切」なデータだ。

 この比較データについて、厚労省は2月19日、記者会見し、データを作成した担当課を統括する土屋喜久審議官がこう説明している。

 調査は、各事業所で働く人のうち、一般労働者の「平均的な者」を1人選んで、残業時間を聞く方式だった。ただ、その残業時間は「1日の時間外労働(残業)の最長時間」を聞いている。

「時間外労働」とは、法定労働時間である「8時間」を超えた分の時間のことだ。一方、裁量労働制についても「平均的な者」を1人選んで、1日の労働時間を聞いたという。

  つまり、厚労省は一般労働者については、1日の実労働時間を調べていない上、1日の「残業時間」も、「平均」ではなく「最長」を調べていた。その数値を集計した数値が「1時間37分」だった。

 一般労働者の実労働時間についてのデータを持っていなかったことから、“苦肉の策”として「残業時間+『8時間』」という足し算をして「9時間37分」をはじき出したというわけだ。

 しかし、足し算の元となっている「残業時間」は、「最長」の時間のため長めに出やすい。さらに、1日の労働時間が8時間以下の一般労働者も相当数いる。