そこで、この制約を打破すべく、昨年4月の政府の未来投資会議で安倍首相が、「対面診療と遠隔診療を組み合わせた新しい治療を、次の診療報酬改定でしっかり評価する」と明言したものの、診療報酬の改定を行う中医協が先月にまとめた答申を見ると、結果は全然ダメでした。

 この答申によれば、一応「オンライン診療料」なるものはできるのですが、初診は必ず対面診療でなければならず、かつその対象は初診から6ヵ月以上を経過した患者(初診から6ヵ月間は毎月同一の医師により対面診療を行なっている場合に限る)に限定されています。そもそも遠隔診療を希望する人は、病院に通うのが困難な事情があるからこそなのに、最初の半年は毎月1回病院に通って同じ医師に診てもらわなければならないというのは、もう無茶苦茶だと思います。

 当然ながら、遠隔診療のサービスに参入したい医療ベンチャーからは不満の声が上がっていますが、この答申に沿って近いうちに厚労省の告示が発出される見通しなので、もうどうしようもありません。

 それでは、なぜ安倍首相が力強く宣言したのに、それが実現されなかったのでしょうか。主には中医協の委員の多くを占める利害関係者が、既得権益の維持に固執したのはもちろんでしょう。厚労省の官僚が既得権益に逆らってまで、遠隔診療の普及という改革をやろうとしなかった罪も大きいはずです。

問題は裁量労働制だけではない
野党とメディアはしっかりせよ

 以上のように、裁量労働制に関する調査ばかりでなく、それに勝るとも劣らない官僚のひどい対応はそこかしこに散見され、それらが改革を骨抜きにしているのです。

 それにもかかわらず、なぜ野党や一部メディアは裁量労働制の問題ばかりを取り上げるのでしょうか。おそらく彼らは、実は政策に関心がなく、単に安倍政権の支持率を下げたいという政治だけに関心があるからではないかと思います。だからこそ、野党の攻めも一部メディアの安倍政権批判も、森友、家計、裁量労働制といったワンパターンになっているのではないかと思います。

 もちろん、それらの問題の追及も大事でしょう。しかし、そればかりにかまけてまともな政策論議を怠っていては、日本の将来にマイナスであるのみならず、そうした野党や一部メディアはいよいよ国民から見放されるのではないでしょうか。そろそろ野党や一部メディアには、猛省してほしいと思います。

(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授 岸 博幸)