しかし、決められたことを粛々と行い、失敗しないことを求められてきた組織が、突然、創造性を求められたとしても、簡単に対応できるものではない。ましてや、幹部層は従来の組織文化における成功によって評価をされてきた。

 残り数年で定年を迎える幹部層も一人の人間だ。無理にことを荒立てたくないという気持ちが生じることは理解できなくもない。筆者が同じような立場にあったとしたら、前述した言葉を発してしまう可能性がゼロだとは言い切れない。

 ただ、それらを踏まえたうえでも、自治体組織には職員一人ひとりの能力を引き出す必要性が生じていることに変わりはない。個々人の能力が組織の成果に強く結びつく時代が到来し、今後、その傾向はさらに強くなるからである。

「地域に出ろ」「チャレンジしろ」「責任は俺が取る」

 自治体職員の能力発揮を阻む言葉がある一方で、能力を引き出す言葉も3つある。「地域に出ろ」「チャレンジしろ」「責任は俺が取る」、圧倒的な成果を上げる自治体職員と話をすると、大抵これらの言葉を発する上司の存在が明らかになる。

「地域に出ろ」は自治体職員と住民の結びつきを後押しする言葉だ。住民参加型の福祉や広報などを展開し、他自治体からの視察が絶えない奈良県生駒市では、市の人材育成基本方針で「地域での活動に積極的に参加すること」を職員に期待している。

 さらに、同市の小紫雅史市長は職員が直接的に住民と関わることを求め、「本業ができるようになるまで、地域に出るべきではない」と述べる管理職に対して、失格の烙印を押す。

 能力を引き出す残り2つの言葉、「チャレンジしろ」「責任は俺が取る」は併せて使われることが一般的である。しかし、冗談のような実話だが「勝手にしろ、失敗したらお前の責任だぞ」と発言する管理職もいるそうなので、ここではあえて分けることとした。

 思い返してみると、筆者が新入社員であったときに、直属の上司が「責任は俺が取る」と幾度となく言っていた。若手中堅にとって、これほどありがたい言葉はない。そう考えてみると、これは公務員の世界だけではなく、民間でも大切な組織風土だ。