どんな企業でもすぐに売上1億円を達成できる=「すぐイチ」の法則とは?!
全国の中小企業800社以上が絶賛!約6年で53期となる人気の「No.1ビジネスモデル塾」を主宰している著者が、この塾で教えている内容をわかりやすく、ストーリー+解説にまとめて1冊にしました。それが『すぐに1億円 小さな会社のビジネスモデル超入門』です。
今回はこの新刊の発売を記念して、本の中から抜粋、再構成をして紹介します。第1話は女性が経営している「漢方サロン」。売上が減る中、どのように危機から抜け出すのでしょうか?

(前回まではこちら)

「漢方・整体サロン」を2店舗経営している藤堂華恵。売上がなかなか増えずに、資金繰りも苦しいため、知り合いから凄腕コンサルタント・遠山桜子を紹介してもらう。その桜子が、「不妊に悩む女性」だけをターゲットにするのは、ターゲットが狭すぎると指摘する。

顧客層の広げ方

「では、誰に来てもらえばいいんでしょうか」
華恵の問いかけに対し、桜子は優しく諭すように質問を返した。
「華恵さんはいったい、何のためにお店を始めたんですか」
華恵は椅子に座りなおし、咳払いをする。

「整体師として修行をしている時に、あらゆる病気の原因は“骨盤のゆがみ”と“冷え”だって気づいたんです。とくに女性は低体温になっている人がすごく多くて」
桜子は時折うなずきながら、黙って聞いている。

「骨盤のゆがみと体の冷えを改善すれば、女性特有の病気がどんどん改善していくんです。結果的に子宝に恵まれやすくなる。更年期障害もおさまるし、痩せるし、姿勢は良くなるし、とにかくいいことずくめなんです。女性の体にとって骨盤のゆがみと冷えは禁物だから、それを漢方や整体の力で伝えなきゃ、って。だから『漢方・整体サロンHana』を立ち上げたんです。全ての女性の健康をサポートしたくって……」
桜子がふふふっと笑う。
「ほら、答えが出た」
「え?」
「今、誰の健康をサポートするって、言いました?」
「女性です、全ての女性」
「ふふ。じゃあ、もうひとつ質問をしますね。子どもが欲しい人と更年期で苦しんでいる人の母数は、どっちが大きいと思いますか?」
「それは更年期の人……ですよね」
「正解。そんな症状を緩和させたいと願う人たちにこの店が勧めているのは何ですか?」
「骨盤矯正です」
「そう、骨盤矯正。私も以前に施術を受けたことがあります。自分でも気づかないうちに骨盤って歪んでいるものなんですよね。そして、それを放置していると不妊につながりかねない。だから、妊活をしている方にも人気があるんですよね」
「ええ。もちろん、妊活も骨盤矯正が大事です」
華恵はキリッとした表情で桜子を見た。

「だったら矛盾はありません。悩める全ての女性の骨盤を正常な状態にしてあげること。それが今日からこの店の使命ってことで、どうでしょう」
にっこりと笑う桜子に対し、華恵は何だか納得がいかないという顔をしている。

「……でも、私は子宝が授かる手助けをすることが自分の使命だと思って今までやってきました。何をやってもダメだったというご夫婦が『華恵さん、ついに赤ちゃんができました!』と言って私のもとを訪れてくれる時の笑顔が、私にとって何よりの原動力なんです。その使命を捨てるわけには、いきません!」語気を強めて主張する華恵をなだめるように、桜子が口を開く。

「じゃあ、不妊に悩む人は骨盤矯正に来ないんでしょうか?」
「え?」
「さっき、妊活も骨盤矯正が大事だとおっしゃいましたよね」
「そうですけど……」
「私は何も不妊に悩む方の相談に乗るな、と言っているわけではありません。
骨盤矯正で健康な体を作りましょう、と打ち出せばいろんな女性が集まる。その中にはもちろん子どもが欲しい人だっているはずです」
さっきまでの落ち込み具合はどこへやら、桜子の言葉に、
「そうか、まずは多くの人が来られる店にするんですね。どっちかではなく、不妊の相談にも更年期の相談にも乗る……。それならお客様も増えそうですし、いけそうな気がします」
と、華恵は途端に笑顔になった。

「水を差すようで悪いんですけど、これはまだ初めの一歩にしか過ぎません。ここからが大切ですからよく聞いてください。顧客層を広げるだけでは不十分なんです。なぜかわかりますか?」
「呼び込みが足りないから、でしょうか。だとすると『骨盤から健康になりましょう』と、新たに打ち出したチラシを配りまくってお客様を取り込むことつまり集客が大切なんだと思います」
華恵は「これが正解だろう」とでも言いたげな様子で桜子に微笑みかけた。
「残念ながら、不正解ですね。もちろん効果的なチラシを作ることは大切だけど、その前にすべきことがあります」
「えっ」
そこまで話したところで、ドアをノックする音とともに、スタッフの声が聞こえた。
「社長、そろそろ次の打ち合わせが」
「あら、もうこんな時間」
華恵は座ったままドアに向かって「すぐに行くわ」と声をかけた。
「具体的に何をするかは、明日までの宿題ということにしましょう。明日10時から同じくここで。いいですか?」
すっかり冷えてしまったゴボウ茶を飲み干した桜子に、華恵は「もちろんです」とうなずいた。