野田佳彦内閣は、2月17日『税・社会保障一体改革大綱』を閣議決定した。

 これは、社会保障改革と税制抜本改革の2部構成になっているものの内容は消費税増税大綱。実際、新聞もそう呼ぶものが多い。

 要するに、税・社会保障一体の新しい家を建てるから資金を拠出してくれと言うのではなく、今までの家が倒れそうだから修理代を出してくれという話だ。

 全体を一読して感じたことは、1ヵ所だけ異様なほど具体的に、鮮明に書かれたところがあり、他は付け足しではないかと思わせること。

 すなわち、消費税増税に関する部分が突出して明確で、他の部分は総じて具体性に欠け、「検討する」というあいまいな言葉が目立っている。

 とりわけ行政改革の部分には幻滅を感じた。これでは「身を切る」どころか「身をなでる」程度に過ぎない。

 大綱は「消費税率引き上げまでに」として「政治改革・行政改革」の項目を設けてはいるものの内容は本気度を疑わざるを得ない。

具体性と実現性の乏しい「政治・行政改革」
熱意なき首相の姿勢がより明らかに

 まず「政治改革」として「衆議院議員定数を80削減する法案を早期に国会に提出する」と記している。

 比例区を80も削れば、現行制度の理念は歪められる。拙速で進めるべきものではない。

 それよりも、議員1人に年間1億円の経費がかかるとしたら、政党交付金を80億円削れば、同等の節減効果があるはずだ。それなら世論は全面的に支持するだろう。現行制度の抜本改革は国政選挙で国民的議論を経てからの課題だ。

 定数削減は落選者だけが身を切るが、政党交付金の減額はすべての議員が身を切ることになる。それを避けているのか。

 それに、この定数削減案はいかにも実現性に乏しい。政略的な変化球と受け取らざるを得ない。