子どもの食育よりも
洗脳タイムを優先する保育園

 松本カンナさん(仮名、26歳)は、新卒として地元ではサービスに定評のあった“優良”保育園に就職。しかし、月収は額面20万円にすら届かず、管理栄養士手当は5000円。ボーナスは雀の涙ほどだった。

 同園は管理栄養士のカンナさんと、栄養士の2人体制で子どもの栄養管理に務めていたが、職場の人手不足は深刻で、衛生管理も劣悪だったという。

「本来、管理栄養士は厨房の中には入らず、栄養士さんや調理師さんを管理するのが仕事です。とはいえ、そんなことをいちいち守っている企業は少なく、普通に私も料理を作っていましたね。しかも園の方針で保育士さんまで厨房に入って手伝わされてたんです。さすがにそれはありえないと思いましたね。法律的にも、厨房に入る人間は検便検査までして衛生管理を徹底しないといけないのに、その園はそういう意識がまるでなかったんです」(カンナさん)

 近年、保育士業界がブラック化していることが度々報じられているが、そこで働く管理栄養士も、もれなく理不尽を強いられているようだ。

「ご飯やおやつを作るのにてんやわんやで、発注業務や献立表作成などデスクワークをする暇がほとんどなかったですね。就業中に終わらなかった仕事は、自宅に持ち帰って毎日サービス残業してましたよ。しかも親御さんが迎えにきて園児が全員帰宅しないと、職員は誰一人帰れないという暗黙のルールもありました。運動会やひな祭りのシーズンには、業務後に食とは一切関係のない飾り付けなんかも手伝わされましたし、土曜には園の理念を職員で勉強し合う“洗脳タイム”を受けさせられるのも当たり前でしたね」(カンナさん)

 心身が疲弊しつつも、子どもの健康・食育のために何とか仕事を続けようとした彼女だったが、やはりブラックな職場をブラックたらしめるのは、そこで一緒に働く人間に他ならない。

「当時の保育士の主任は50代の女性でしたが、長年主婦をやっているからか、私が作る料理に対してはよくケチをつけてきましたね。『あんまり美味しくないわね~これ』『見た目が茶色いわね~』みたいな。しまいには『管理栄養士なのに牡蠣に当たったの?』とか嫌味まで言われて、“うるせえよ、どこの姑だよ!”って感じでしたね。結局、勤続2年目で早期退職しました」(カンナさん)

 現在、カンナさんは派遣社員として大手建設会社の事務(月収25万円)の仕事をしている。