これらの高いハードルをピーチとバニラ、2社のリソースを結集することで越えるのが統合の狙いだ。2社の社員を合わせると約1500人、機材は34機になる。経営体制を一本化することでピーチの本拠地である関西国際空港と、バニラ拠点の成田国際空港をベースに、国内外の有望路線へリソースを柔軟に振り向けられるようになる。

 そもそもグループ内に同じ業態の会社が二つあるのは非効率で、株式市場からは「抜本的な再編をするべきだ」と指摘されてきた。

 統合推進へ一歩踏み出したかに思えたのは昨年2月。ANAHDは304億円を投じてピーチへの出資比率を38・7%から67%に引き上げ、子会社化した。

 しかしその発表会見上でも、バニラとの統合については、「両社がそれぞれ切磋琢磨した方がいい」(片野坂真哉・ANAHD社長)、「独自性を維持したい」(井上慎一・ピーチCEO)と否定した。その後1年の間に、両社に一体どんな心変わりがあったのか。

「このままではまずい」──。ANAHD幹部陣は100%子会社のバニラの業績が浮上しないことに頭を抱えていた。主力の台湾路線は価格競争の泥沼から抜け出せず、期待された函館などの新規路線も採算ラインを割っている。

「バニラは“ミニANA”だ」。同社が赤字続きの背景を、関係者はこう説明する。各セクションの責任者はANA出向者で固められていて、「LCCで必須の低コスト化や、需要を開拓するための自由な発想がつぶされてしまう」(同)。実態は“フルサービスキャリアの安売り”にすぎないというのだ。

 こうした状況をてこ入れしたいANAHD幹部陣は「業績のいいピーチのノウハウをどうにかバニラに移植できないか」と探っていた。しかしピーチは仙台や札幌、新潟に新規就航するなど路線拡大で大忙し。「人の面倒を見ている暇などない」(同社幹部)とバニラの窮状に興味を示さなかった。

 風向きが変わったのは昨年夏。マレーシアのエアアジアXと、シンガポール航空系LCCのスクートが関空~ハワイ路線を就航。すぐに人気路線となった。