カリスマの持つ能力を
多くの人で分担するシステムに

「あなたがいないと困るんです」

 この言葉に支援者が奮起し、支援活動がうまく回っているときはお互いにパッピーだと思います。しかし、そう言われることであまりにも精力的に活動しすぎ、自分の能力を超えるギリギリの状態に追い込まれてしまうと、早晩肉体的にも精神的にも燃え尽きてしまうことは目に見えています。

 精力的な支援活動をするカリスマ的な存在を非難しているのではありません。その人の姿勢に憧れ、感化され、多くの後継者が出てくることも期待できるのは事実です。

 問題なのは、カリスマ的な存在に頼り切り、その人がいなければ支援活動が立ち行かない社会システムの未熟さです。

 ある自治体の自殺者が急激に減った源が、たまたま存在した献身的な人の精力的な努力の成果だった。これは一見美談に聞こえますが、社会システム全体の成熟度が進歩したわけではありません。ある自治体が減っても、別のほとんどの自治体が減っていないから3万人を割らないのは自明の理です。これでは、自殺防止活動が社会システムとして軌道に乗ったとは言えないと思います。

 カリスマ的な存在が現れたら、なぜその人はそういう活動ができたのかを分析し、その人の持つノウハウを周囲に落とし込むことが重要だと思います。そのうえで、スーパースターひとりに頼るのではなく、地道な支援は多くの人でシステマチックに分担し、チーム全体として支援する仕組みに変えればうまく機能するのではないでしょうか。

 献身的な人の存在を、美談や精神論的な見方に終わらせてはいけないのです。