ネットワークサイエンスがもたらす
金融イノベーション

 スウェーデン中央銀行は、ブロックチェーンなどに関するハイテク企業との協働にも積極的だ。今後、“ブロックチェーン”などのネットワークシステムを応用し、金融サービスや金融システムの高度化を目指す考えは強まっていくだろう。それは、社会全体でのイノベーションにつながる可能性を秘めている。

 デジタル通貨が普及すると、現金を持ち歩く必要性は低下し、かなりの決済がインターネット上、あるいはモバイル決済で成立する可能性がある。その場合、銀行のATM・支店などが必要性を失う。

 小口の資金提供者と資金需要者がシステムによって直接結びつけられる、クラウドファンディングが整備されると、これまでの金融仲介機能の重要性が低下することが想定される。その場合、ネットワークによって信用力の評価を行い、出資者を募ることで銀行などの機能が代替されていく可能性は無視できない。

 わが国では、現金志向が強く、クレジットカードでの決済割合も諸外国に比べて低い。そのため、今のところ、“デジタルマネー”を導入する必要性は高くないとの指摘がある。ただ、海外からの旅行者の増加によって、従来にはない発想が持ち込まれている。民泊、ライドシェア、モバイル決済などはその代表例だ。この傾向は続く可能性がある。

 海外ではブロックチェーン技術を応用して決済コストの削減、期間の短縮化など金融サービスの高度化に向けた取り組みが、わが国以上に重視されている。民間の金融テクノロジーの高度化は金融の在り方を変え、中央銀行にも変化への適応を求めるだろう。

 世界全体でデジタル通貨や、新しい金融ビジネスの創出に向けた取り組みが進みつつある。これまでに起きた仮想通貨の取引システムの問題、規制に関する論点を、新しい金融のあり方を目指す議論につなげていくことが必要だ。

(法政大学大学院教授 真壁昭夫)