法律の主旨を理解せずに
締め付けばかりを強化するのは愚か

 もっとも、私は、演習効果を高めるために、冒頭からできるだけ気心が知れるようにと、セミナー開始前に、できるだけ参加者の一人ひとりに挨拶をして、名刺交換をするようにしている。

 つまり、主催者から参加者名簿を受け取らなくとも、参加者の属性は知ることができている。参加者からは、「これまで多くのセミナーに参加してきたが、講師の方から挨拶してきてくれて、名刺を差し出してくれたのは初めてだ」と言われこそすれ、個人情報である名刺を差し出すことはできないと拒絶されたことは、これまで一度もない。

 セミナーや能力開発プログラムの業界でも、個人情報の取り扱いに過敏になるがあまりに、セミナーの効果を高めるという、セミナー本来の目的がないがしろにされるケースが増えている。

 最近、とみに増えたこうした体験は、私だけでなく、多くのビジネスマンが実感していることではないだろうか。そして、個人情報取り扱いへの行き過ぎた配慮が、ビジネス伸展を阻害しているケースも出ているのではないかと感じる。

 もちろん、個人情報取り扱いを厳格に行うことは大事だ。一方で、ビジネスを伸展させることも必要だ。コンプライアンス部門は個人情報管理を徹底しましょうという指示を繰り返し、営業部門は営業推進の旗を振る。その間に立つ一般社員は、個人情報保護と営業推進の要請の板挟みにあうことになる。

 コンプライアンス部門から言われれば厳格な管理のためにブレーキを踏み、営業部門から発破をかけられればアクセルを踏み込む。減速と加速を繰り返すようなビジネスの進め方では、エンジンはショートしてしまいかねない。

 大事なことは、個人情報保護法の主旨である。それを過大に捉えてすべて駄目だと思い込み、営業やセミナーの目的を損なう取り扱いを安易にしないことだ。落ち着いて法律を理解し直せば、名刺を出すことも、社名を伝えることも問題ではないことがわかるはずだ。また、セミナー参加申込書に「講師にも共有する」と一言付け加えるだけで済むのだから、それをせずにセミナー効果をわざわざ損なうだなんて馬鹿げている。