鏡に映った自分の姿を、じっと見つめた

 熱傷病棟に、外見的な容姿による差別が存在するなんて信じられないかもしれませんが、それは確かに存在します。

 新しい入院患者のベッドのそばを歩いていた時、彼らから注がれたまなざしと、ささやきに気づいたのです。

「ああ、よかった。少なくとも、うちの子はあんなにひどくないわ!」

 またある時には、僕がそばを通り過ぎると、家族全員が文字通り壁のほうへ後ずさりしたのです。

 そんな行為に、僕はひどく傷つきました。

 本来、いちばんの思いやりと理解を期待できるはずの病院で、僕は偏見に立ち向かわなければならなかったのです。

 でも、そのような不愉快な出来事から、母は僕を守ってくれました。僕を不当に扱ったり、失礼な態度を示す人には厳しい態度で立ち向かってくれたのです。

 それでも、一人でいる時には、残酷なまなざしや辛らつな言葉に苦しみ、まごつきました。僕には理解できなかったのです。

 この病棟の子全員が、何らかの傷を負い、外見が損なわれているのに、どうしてみんな同じじゃないのだろう?

 僕の外見だけが、大人を恐怖におののかせ、意地悪なことを言わせるのはどうしてなのだろう?

 初めのうちは、彼らの態度に面食らいました。

 でも、僕には何も悪いところはありません。もし、何か悪いところがあるとしたら、それは僕をひどく扱う人たちのほうなのです。

 僕は、鏡に映った自分の姿をじっと観察しました。熱傷病棟で鏡を見つけるのは容易ではありませんでしたが……。

 見れば見るほど、僕はそれに満足しました。そして、自分の外見が好きになったのです。

 僕の顔は、とてもユニークだったのです!

 ようやく、「他人が自分のことをどう考えようと、かまわない」と、心を決めました。

 僕のことを知っている人は、みんな僕を愛してくれていました。ですから、僕も、自分自身を愛そう、と決心したのです。

 しかし、人生の厳しい現実は、もう少しあとになってやってきました。

 僕を待っていたのは、冷酷無残な幼稚園という世界だったのです。

*この連載は、3/5~3/9まで、5日連続で更新します。


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