ダイヤモンド社刊
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「日本では誰もが経済の話をする。だが、日本にとって最大の問題は社会のほうである。この50年に及ぶ経済の成功をもたらしたものは、社会的な制度、政策、慣行だった。その典型が系列であり、終身雇用、輸出戦略、官民協調だった」(『ネクスト・ソサエティ』)

 それらのものは、日本の古くからの伝統として片付けられることがある。間違いである。ドラッカーは、それらのものは、初めて日本を訪れた1950年代にはまだ生まれていなかったという。じつは、それらの経営手法を制度化した戦後財界人を後押ししたのが、ドラッカー、デミング、ジュランだった。

 日本の社会に根ざしたものではあった。だから成功した。戦後の荒廃から今日の経済をもたらしたのは、戦後のリーダーたちが生み出したそれらの制度、政策、慣行だった。いずれもすばらしい社会的イノベーションだった。

 しかも、90年頃まで見事に機能した。日本の面目躍如たるものだった。ドラッカーに言わせるならば、なにしろ日本は、大化の改新において中国の制度を日本化したばかりか、明治維新においては、日本の西洋化ではなく、西洋の日本化に成功した国だった。

 だが、それら過去の制度、政策、慣行も期限切れとなった。もはや、満足に機能しているものはほとんどない。同時に、雇用や高齢者医療などへの取り組みも弥縫策のままである。したがって、今の日本こそ、あくまでも日本の社会に根ざした新しい制度、政策、慣行を緊急に生み出さなければならない。

 産業、雇用、教育、医療、年金その他すべて、経済の仮面をかぶった社会の問題である。あらゆる先進国と新興国が抱えている問題である。しかし、すべて社会のあり方にかかわる問題であるがゆえに、それぞれの国がそれぞれの伝統のうえに、それぞれの解決策を見出すべきものである。

「次の社会―ネクスト・ソサエティはすでに到来した。もとには戻らない。急激な変化と乱気流の時代にあっては、大きな流れを知り、基本に従わなければならない。個々の変化に振り回されてはならない。大きな流れそのものを機会としなければならない。その大きな流れが、ネクスト・ソサエティの到来である」(『ネクスト・ソサエティ』)

週刊ダイヤモンド