2月27日午後9時半過ぎ、東京・広尾の超高級マンションのゲートに黒塗りのハイヤーが滑り込んできた。降り立ったのはメガバンク、三井住友銀行の國部毅頭取。この日あった突然の破綻劇のせいか、凍える寒さのせいか、表情は疲れていた。

 國部頭取の登記簿上の自宅は東京郊外の住宅地だが、このところ多忙を極めているため、ほとんど帰れず、会社が用意したこの別宅で過ごす日々が続いていた。

「エルピーダは予想外だった。破綻は避けられなかったのか」。國部頭取は自省を込めて口を開いたようだった。

 この日の午後、半導体DRAM世界3位で経営再建中だったエルピーダメモリが、会社更生法の適用を申請した。同行は主力銀行の1行として、210億円を貸し付けていた。

 メガバンクトップの悩みの種は尽きない。

 同日夕方には、東京・新宿の京王プラザホテルで、オリンパスが新経営陣の発表会見を開催。同社のメインバンクである三井住友銀行から会長を迎えることが正式発表されたが、海外投資家からは銀行主導の人事に反発の声が上がっていた。

 この日はさらに、同行が率先して追加融資を決めた東京電力の経営改革委員会も開かれていた。他にも、同行がメインバンクを務める自動車大手のマツダや電機大手のNECなど、問題を抱えた大口融資先が増資策やリストラを発表したばかり。

「やらなければいけないことは山ほどある」と國部頭取は漏らした。

 エルピーダ、オリンパス、東電──。破綻、予期せぬ不祥事や事故が、三井住友銀行の大口融資先で立て続けに発生。かつて超の付く優良取引先だった企業が一夜にして問題企業に転落するケースが相次いでいる。