「食事」「運動」「呼吸法」「酸素マスク」…世界中のあらゆる方法を検証

 驚くなかれ、このスキャンは僕の前頭前皮質──複雑な認知行動と意思決定を司る、最も高度に進化した脳の部分──が、ごくわずかな代謝活性しかなく、ほとんどエネルギーを生み出していないことを示していた。集中して考えようとしたとき、たちまち活動すべきこの部分が、ろくに動く気配がなかった。

 画像を一目見た精神科医が僕に言ったことは、決して忘れられない。

「デイヴ、君の脳の中はめちゃくちゃだ。いま、こうして私の前に立っていられるのが不思議なくらいだ。これだけうまくごまかしている人は初めて見た」

 その医師は、僕がただ体を動かすためだけに多大な労力を使っていると認めた最初の人だった。彼は、僕の脳がしかるべきエネルギーを生み出さず、使ってもいないことを目の当たりにしたのだ。

 最良の知らせではなかったが、これを知ったことで僕は自由になった。突然こう悟った。僕が成功しようと悪戦苦闘してきたのは、自分が失敗作だからでもなく、身のほど知らずなことでもないと。脳に物理的な故障があってパフォーマンスを損なっているだけなのだ。

 この日、僕の脳機能の不調は、道徳的な問題ではなく、体というハードウェアの課題となった。自分のシステムの弱点を見つけ出し、取り除けばいい。複雑なシステムをコントロールするのはキャリアを積んだコンピュータ・セキュリティ技術者(別名ハッカー)として、僕が飯の種としてきたことだ。

 そこで、アイデアが浮かんだ。自分の脳のパフォーマンスを最大化するように、ハックしてやろう

 僕は17年と100万ドル以上を使って、ハイパフォーマンスの状態、パワー、回復力を生み出す秘訣を発見する旅に出た。

 酸素マスク、大脳レーザー、脳トレ・ソフトウェア、脳波図ニューロフィードバック(脳活動をリアルタイムで表示するバイオフィードバックの一種)、呼吸法、電気刺激、氷浴、ヨガ、瞑想、食事、薬剤、ホルモン、ありとあらゆるサプリメントを試し、どれが効いてどれが効かないか、それはなぜかを探った。

 23年の歴史をもつパロアルトのアンチエイジングNPO、シリコンバレー保健研究所の所長、のちには会長になって、各分野のエキスパートと長い時間を過ごした。

 ストレス要因に脳が激しく反応しないようにして、回復力をはぐくむために、ストレスに対する神経系の反応と細胞内でのエネルギー生成をコントロールした。その間に僕が学んだことは、人生を変えたと言っても過言ではない。

 数多くの実験ののちに、比較的簡単なライフスタイルの変更でずいぶん脳エネルギーを高められることを知った。

 このおかげで、きわめて乱雑な環境でも集中力をもてるようになり、より多くを記憶でき、クリエイティブな発想ができるようになった。