定額も定率も長生きリスクには対処できていない

 このように引き出し方を工夫したとしても、80歳以降、とても長生きした場合には、途中で資産が枯渇してしまうかもしれません。長生きの可能性があると、一般的には必要以上に引き出し額を抑制し、倹約生活を送ってしまいがちです。この状況で、意外にも早く亡くなったときには予想以上に遺産が多くなってしまいます。もちろん、多くの遺産を残したいのであれば、倹約生活も受け入れられるかもしれませんが、そうでない場合、墓場までお金を持っていくことはできませんので、倹約生活が無駄になってしまいます。

 このような状況を回避するために、アメリカで普及しつつある保険が「長寿年金」と呼ばれる商品です。これは例えば、65歳時点で85歳支給開始の終身年金を購入するイメージで、85歳までに亡くなってしまうとほとんどお金は戻ってきませんが、85歳まで生きれば、そこから先は生きている限り給付されるという年金商品です。この場合、資産の取り崩しは85歳までという明確なゴールができますので、無駄に倹約する必要がなくなるのです。

 このような年金のことをトンチン年金といいます。これまでは早死にした人のお金が長生きした人に渡るという点で倫理的にどうか、という意見もあったのですが、アメリカではこのような年金が商品化されるようになってきました。確定拠出年金などでは米国労働省がお墨付きを与える状況になっており、今後、より一層普及すると思われます。

 このトンチン年金の考え方を取り入れた商品も日本で見られるようになってきました。今後は日本でも資産運用の取り崩しと保険商品(長寿年金)からの給付をうまく組み合わせることで、長生きリスクに対処していく、そんなことが求められる時代になるのではないかと思います。

今回の川柳
老後資産 引き出し方が 鍵となる

(アライアンス・バーンスタイン株式会社 AB未来総研 所長 後藤順一郎)

※本記事中の発言は筆者の個人的な見解であり、筆者が所属するアライアンス・バーンスタイン株式会社の見解ではありません。