当連載では第一回から一貫してオヤジ世代の老後の長さについて言及してきました。実際、平成27年の簡易生命表に基づくと、55歳のオヤジたちの平均余命は27.89年となっているので、55歳のオヤジたちの半分は82.89歳まで生きることになります。もちろんこれは平均ですので、半分のオヤジたちは82.89歳より長く生き、約四人に一人が90歳くらいまで生きると計算されます。一方でこのような話は当連載でし続けていますので、もうあまり衝撃を受けない読者も多いと思います(そのような方は優良な読者です!)。そんなオヤジの皆さんに、より長期的な視点を持ってもらうために、もっと刺激的なデータを見つけました。それはカリフォルニア大学バークレー校などが実施したThe HumanMortality Databaseというリサーチなのですが、そこでは2007年に生まれた日本人の子どもの平均寿命は他の先進国よりも突出して長く、なんと107歳と推計されているのです! さすがに2007年に生まれた子どもと今のオヤジたちの状況は違いますが、それでもかなり高齢まで生きることを前提とした人生計画の必要性を痛感いただけたと思います。

 ではその人生計画において、仮に65歳に定年退職し95歳まで生きるという計画を立てたとして、その30年分の生活費を、公的年金、企業年金、そして定年退職までの期間の自助努力(自分年金)で準備することは可能なのでしょうか?

資産運用は必要だけど、それだけでは十分ではない!?

 当連載では長い老後のために、働いているうちから資産運用で資産を殖やすことの必要性を繰り返し主張しています。それは間違いではないし、ぜひとも実施していただきたいのですが、勤労期間(約40年)と退職後の期間(約30年)のバランスがあまりに悪くなっているため、さすがに資産運用だけでこの長い老後を乗り越えるのは難しいように思います。となると、残された選択肢としては、「節約をする」か「所得を増やす」のどちらかになります。計画段階から老後の生活を切り詰めることはやりたくないので、結局、計画段階にいるオヤジたちに残された選択は「所得を増やす」、つまり働き続けられるようにするしかないのです。実は、厚生労働省が実施した国民年金と厚生年金の財政検証(平成26年)においても、メインシナリオでは65~69歳の64.7%が働き続ける前提で計算しています。つまり、国も今よりも多くの人に65歳以降も働け、と暗に言っているのです。少子高齢化によって生じている勤労者数と高齢者数のアンバランスを修正するには、高齢者の定義を変えて、今まで高齢者と見なされていた人たちにもっと長く働いて保険料を納めてほしいのだと思います。老後も働き続けることは、自分の生活を守ることに直結するのはもちろん、公的年金の問題を軽減する効果もあり、若い人たちのためにもなるのです。