2016年秋のリンダ・グラットン氏による著書『ライフ・シフト』の発刊以降、“人生100年”というキーワードを様々なところで耳にするようになりました。当連載でもこのキーワードを繰り返し使っていますし、なんと安倍政権もこの流れに乗り、今年9月に「人生100年時代構想会議」を発足させました。そこでの主なアジェンダは、(1)すべての人に開かれた教育機会の確保、学費の負担軽減や無償化、何歳になっても学び直しができるリカレント教育、(2)高等教育改革、(3)新卒一括採用だけでない企業の人材採用の多元化、多様な形の高齢者雇用、(4)高齢者型社会保障から全世代型社会保障への改革、といった内容となっています。

 子育てがもう少しで終わるオヤジ世代の皆さんは、教育の無償化と言われても「もっと早くやってくれればよかったのに!」と思うくらいで、あまり関心はないでしょう。おそらく気になるのは、多様な形の高齢者雇用、そしてリカレント教育あたりではないでしょうか。そこで、今回は高齢者雇用の現状について見ていきたいと思います。

65歳までの雇用状況:職には困らないのだが…

 一生涯働き続けることができる社会の実現に向けて制定された「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」では、65歳までの安定した雇用を確保すべく、企業に「定年制の廃止」や「定年の引上げ」「継続雇用制度の導入」のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を講じるよう義務づけています。厚生労働省がまとめた2017年の「高年齢者の雇用状況」を見ると、99.7%の企業がこれらを実施しており、65歳までの雇用はほぼ確保されている状況となっています。ただ、この三つの選択肢の中では「継続雇用制度の導入」を実施している企業の割合が80.3%と圧倒的に多く、多くの企業は従来の定年制を維持しながら65歳までの雇用を確保しているのだと思われます。継続雇用制度の場合には、正社員からパートなどに立場が変わることも多く給与が下がるなどの問題も生じますが、公的年金の受給まで収入がまったくなくて困るといった最悪の状況は回避されているようです。