このマドレボニータがおもしろいのは、ボディエクササイズの受講生だった女性たちが、その後インストラクターになったり、広報や運営を担ったり、『産後白書』の編集、翻訳をしたりと事業活動に参画するところにある。在宅のままでも運営に参画できるように、スカイプやクラウドオフィスを活用している。こうして、サービスをよく知る顧客を巻き込んで組織は成長する。
さらに、母になる前まで働いていた彼女らにとっては、出産後にすっかり「消費者」にまわってしまっていた自分が、サービスを提供する側になることができる。社会とのつながりを取り戻す。
これは、「尊厳の回復」に他ならないし、母たちが“いきいき”とすることは、世の中のリソースの活性化としてもインパクトがある。結果として、政府が提供するよりもはるかに効率よく、そして効果的に「産後支援」「社会復帰支援」の2つを、マドレボニータが実現している。
「あるもの」を好奇心いっぱいにさがしてみよう!
また、『社会起業家になりたいと思ったら読む本』に登場する、ピースゲームズの例は素晴らしい。子どもたちに、特定の「マインドセット」を諭して教えるのではなく、「5年生の子どもたちが、低学年の子どもたちを教える」という行為を通じて伝播していく。「子どもたちが自分で教える」というのが、マインドセットの変わる、“行動”(アクション) というボタンだった。
ここには「何もない」というものの見方から、「何かある」と思って、すべてのものを見渡してみよう。
意外と身近なところに、社会に広がる革新的なイノベーションの火種は潜んでいる。そこから、顧客や当事者たちとともに粘り強く探り、進化させていく。まずは、「あるもの」を好奇心いっぱいにさがしてみよう!
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社会起業家になりたいと思ったら読む本
――未来に何ができるのか、いまなぜ必要なのか
デービッド・ボーンステイン、スーザン・デイヴィス著
有賀裕子訳、井上英之監修
グラミン銀行の創設メンバーと、社会起業専門の世界的ジャーナリストがまとめた、「社会起業」を体系的に学ぶための1冊。世界中のビジネススクールで標準的な入門書として採用されている本でもある。
4/6判並製・280ページ・1680円(税込)
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