「社会起業」の記事は、事件などのニュースに比べ、報道されにくい。一方、世界では、問題を”あばく”だけでなく、”解決”への動きにスポットをあてた、プラットフォーム・サイトが登場するなど、メディアにも変化の兆しも見える。
連載第5回では、「問題の報道」だけでなく、「問題解決の報道」の役割を担うために、メディアには何ができるのか、紹介したい(『社会起業家になりたいと思ったら読む本』では1章の【7:メディアとできること】に掲載)。
いま、メディアにはもっと大きな役割がある!
「ニュー・ヒーローズ(The New Heroes)」(2005年、PBS・全米公共テレビ放送)というアメリカのTV番組がある。社会起業家を紹介する番組なのだが、オープニングがめちゃくちゃカッコいい。
「この世界には、まだまだ貧困、環境、教育、差別などさまざまな問題がある。それらに果敢に挑戦する知られざる新しいヒーローたちがいる。まだ多くの人が知らない、その彼らの姿を追っていきたいと思う」
と、俳優ロバート・レッドフォードの渋い声のガイドで始まる。
オープニングもさることながら、この番組のしびれる点は、全米をカバーするTV局が当時、まだそのコンセプトも一般に知られていなかった頃に、社会起業家をメインの題材に選んだことにある(それまで社会起業活動の広報や支援を担っていたのは、主にインターネットなどのニュー・メディアだった)。
日本でも、2008年頃からNHKが「チェンジメーカー」という番組を企画。放送時間は深夜だったが、若い世代に、カジュアルにそして等身大の目線で、世界の、そして日本の社会起業家たちの物語を紹介した。
私も、企画やコメンテーターとして参画したが、この番組を見た視聴者が、若者たちに音楽会社を立ち上げてもらうことで変化を生み出す、NPO法人「ブラストビート」を創設するなど、一定以上の反響があった。
その後も、NHK-BSで「ミッション」という番組に引き継がれ、慶応SFCでの公開授業で、ケニアで活動する社会起業家と若者たちが対話し、学生たちから新しいアイデアを提案、それを実行に移していくプロセスなどを、番組で紹介していった。また、他にも、「難問解決! ご近所の底力」(NHK)など、住民たちによる、地域の課題解決とその手法のスケールアウト(他地域への展開)を意図した、非常におもしろい番組も登場した。
メディアは、課題解決への「アーカイブ」になろう
『社会起業家になりたいと思ったら読む本』でも書かれているように、メディアは、社会の課題や問題をただ伝えるだけではなく、それ以上の役割を果たせるのではないか? 事実の報道は重要だが、「問題の報道」だけではなく、「問題解決の報道」もすることで、新たな火種や希望を、この世の中に流通させることができるのではないか?