潜入すると、早速、ミッキーマウスのかぶり物が転がっていたのでかぶりたいと訴えると、言葉を濁されて拒否される。以前は現場の判断でミッキーを勝手にかぶっていたらしいが、パクり問題で揺れたときに、上層部に怒られ、さすがに今では使えないらしい。それでも、7人の小人はディズニーをもろパクりなのに、単なる小人だから著作権に触れないからと、堂々とパレードしている。わかるようでわからない。

 パレードだけでなく園内のクレーンゲームにはドラえもんなどのパクり人形が所狭しと並ぶ。著者が同僚に「問題ないのか」と聞くと、ドラえもんのパクりなんてそこらにあるから問題ないと答えられる。バレなきゃ、オッケーな姿勢は著者が言うように、ある意味すがすがしいかも。

「メディアが伝えるように中国、ヤバイ」と思うかもしれないが、著者が潜入した現場で働く人々は至って普通なのだ。全くもって職場に絶望していないし、ムダな希望も抱かない。著者が日本人だとわかっても、敬遠したり、いやがらせしたりしない。西洋的な遵法意識の感覚が乏しいだけで、寿司を一生懸命に握るし、無邪気にかぶりものをする。

現場への潜入から
見えてくること

 七つの現場への潜入から見えてくるのは、人材の流動性の高さだ。確かに専門的なスキルが求められないとはいえ、いずれも単純労働でなく、経験がものをいう現場である。著者が中国語を苦にしないというのは大きいが、履歴書を持って行って「経験がある」とはったりをかますと採用される。潜入ルポというと潜入までのプロセスがひとつの醍醐味だが、驚くほどあっさりした現場もある。

 解雇規制がないからなせる業かもしれないが、人にせよ事業にせよ、とりあず雇ってみたり、やってみたりして、ダメならそこでまた考える。著者が指摘するように、この緩さ、良く言えば臨機応変さが中国の強みかもしれない。今、日本に必要なのは、このノリかも。

(HONZ 栗下直也)