彼は、水嵩が増す中で橋げたにしがみついたが、真面目な社員は、会社が危機に陥っても、会社にしがみつこうとする。これはカリスマと呼ばれる経営者がいる会社ではもっと顕著になる。こうした会社では危機に陥れば、陥るほど、社員たちは真面目にカリスマ経営者の言いつけを守ろうとする。そのために改革が遅れ、さらに会社はダメになっていく。

 真面目な社員は、尾生のように橋げたにしがみつくだけなのだ。もし、不真面目だったら増水の危険を察して堤防の上で待ってみようとか、なぜ女性が来ないのかと疑問に思い、女性の家に行ってみるとか、あるいはボートや浮き袋を持ってくるとか、もっと大掛かりなら川をせき止めるとか、何か対策を実施するだろう。それが女性、即ち経営者の意向に逆らうことであっても、これらの対策が危機から会社を救うのだ。

 第一勧銀や山一証券、オリンパスに不真面目な社員、上司のいうことに唯々諾々とは従わない社員がいて、その社員の諫言に耳を貸す劉邦のような経営者がいたなら、危機を乗り越えたことだろう。

タラントのたとえ話

 新約聖書に、「タラントのたとえ話」がある。

 主人が、旅に出る時、3人の下僕に、5タラント、2タラント、1タラントを預けた。1タラントというのは、当時の約16年分の賃金だそうだ。旅から帰ってくると、5タラントを預かった下僕は、倍の10タラントに増やしていた。同様に2タラント預かった下僕も、倍の4タラントに増やしていた。

 主人は喜んで彼らにさらに大きな仕事を与えた。

 ところが、1タラントを預かった下僕は、そのままの1タラントを主人に返した。下僕は「あなたが厳しい人で、怖かったので、預かった1タラントを土に埋めておきました」と言った。主人は、その下僕を怠け者と叱り、銀行に預けておけば利子分だけでも増えたではないかと言い、追い出してしまった。

 この話は、天の国の様子をたとえたものだが、神の教えを広め、増やす人に天国は開かれているという意味なのだろう。