規制や規定に合わせるだけの開発で
クリエイティブな発想は難しい?

 自動車産業に従事している者が革新的な発想を持てない主な原因は、昨今の自動車産業が「レギュレーションマッチング」という既定路線を歩んでいるからだ。

 自動車におけるレギュレーションマッチングとは筆者の造語で、国や地域、または国際機関などが定める規制や規定に、合わせるような車両の開発と販売を指す。

 ここでいうレギュレーションとは、排気ガス規制、環境対応車の販売台数規制、そして衝突安全におけるアセスメントなどだ。自動車メーカーはこうした各種規制をクリアすることを基盤として、中期経営計画を立てる場合が多い。そもそも、道路交通法や道路車両運送法などによって、クルマの走行条件や車両規定という枠組みからはみ出すことができない。そのため、自動車産業で革新的な発想をすることは難しい。

 一方、IT産業界でも様々な国際規格はあるが、ユーザー中心のサービス事業という出口戦略を明確にした、マーケントイン型の発想で製品の企画・開発・販売が進むため、企業側には多彩なクリエイターが必要になる。

 こうしたIT産業的な発想を、自動車産業に盛り込もうとする動きが世界各国であるのだが、主導権は自動車メーカーや自動車部品メーカーではなく、IT大手や通信大手、または行政機関に移っている印象だ。

日本は振り回されるばかり
レギュレーションマッチングすら難しい

 そうした自動車産業界が厳しい局面を迎えている中で、4月上旬に米連邦環境局(EPA) が驚きの発表を行った。

 オバマ政権が2011年に作成した企業別平均燃費(CAFE)を、大幅に見直す。また、カリフォルニア州が独自にZEV法(ゼロ・エミッション・ヴィークル規制法)を1990年から施行しているが、この連邦政府と州政府による排気ガス規制のダブルスタンダードを、不適切だと指摘。今後は連邦政府の排気ガス規制で一本化を目指すというのだ。

 日系自動車メーカーはこれまで、販売台数の多いアメリカでのCAFE、さらにEVやプラグインハイブリッド車などの電動車についてZEV法を重視してきただけに、トランプ政権による突然のレギュレーションチェンジに驚いている。

 自動車産業が優秀な人材を継続的に確保する方法は何か?

 現時点で、筆者に良策は思い浮かばない。

(ジャーナリスト 桃田健史)