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3月10日、西友がSBS(売買同時入札制度)米の販売を開始した。5キログラムで1299円と、同店で最も安い国産米より2割も安い。かっぱ寿司や牛丼の松屋も相次いで輸入米を導入、TPP交渉参加への協議が続く中での“輸入米騒動”で、「TPP論議に影響する」と喧伝され始めてもいる。
一般にはなじみがないが、ウルグアイ・ラウンド合意後の1995年から、日本は年間77万トンのコメ輸入を義務付けられており、うち10万トンがSBS米だ。その多くは外食企業に流れ、一部は国産米とブレンドされて“国産ライス”に化けていたのは公然の秘密だ。そんな輸入米が個人向けにスーパーにも並んだのだ。
ただし、SBS米はこれまでは不人気だった。国内需要低迷と生産過剰で国産米相場の下落が続いたため、実質的な関税であるマークアップ(政府に納める輸入差益)を負担してまでコメを輸入するうまみが減っていたからだ。
だが、東日本大震災で様相は一変した。相場は震災前から2割も上昇し、今も高止まりしたままだ。
コメ不足が原因でないのは明らかだ。放射能汚染の影響を受ける可能性がある、福島県や宮城、茨城など近隣6県のコメが全量流通しなくても、国内消費を賄える供給過剰状態だからだ。だが、一部の農協や農家が高値期待で在庫を抱え込む一方、集荷業者や卸の買い漁りも続いている。
この結果、相対的に割安になった輸入米が脚光を浴び始めた。米トレーサビリティ法施行もあって、2010年度は輸入枠の4割すら消化し切れなかったSBS米は、11年度はフルに消化され、その勢いは衰えそうにない。
だが、実際にコメが不足して相場が高騰した93年でさえ、翌94年の、新米が出回る夏前にコメ相場は暴落した。現在の“輸入米騒動”は、市場原理を無視して高値安定が続くコメ相場に対する流通・外食企業の反撃でもある。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 小出康成)