AIという言葉を聞かない日はない。そのAIの土台となる統計解析を専業とするSAS Instituteは「アナリティクスエコノミー」が到来するという。それはどんなものか、そもそもAIはいいことばかりなのか? SASが米デンバーで開催した年次イベント「SAS Global Forum 2018」で探った。
統計解析からAIプラットフォームへ
戦略を変更するSAS
AIへの関心は高く、IT企業は一斉に自動化、より良い意思決定、洞察などのメリットを押し出して自社のAI機能を売り込んでいる。SAS Instituteは1976年の創業以来アナリティクス(分析)を専業としてきたベンダーだが、AIが民主化する時代のSASの戦略は何か?
「AIはSASが長年開発してきたアナリティクスを進化させたものだ」ーーSASの創業者兼CEO、ジム・グッドナイト(Jim Goodnight)氏はいう。グッドナイト氏は、統計解析システムを作成するというノースキャロライナ州立大学のプロジェクトをもとに会社を立ち上げ、頭文字(統計解析システム:Statistical Analysis System)をとってSASとなづけた。それから42年間、CEOとして非公開企業のSAS Instituteを率いている。創業以来、売上高を毎年成長させ、働きがいのある会社の上位にランクインさせるなど、優れた経営手腕でも知られる。
Jim Goodnight氏
今年4月初めにSASが米コロラド州デンバーで開催した年次ユーザーイベント「SAS Global Forum 2018」では、ここ最近のAIブームもあってか前年より7%多い6300人が参加した。過去最高となった来場者に向かってグッドナイト氏は、「製品ポートフォリオ全体にAIを組み込む。コンピュータービジョン、自然言語処理などを利用してAIのパワーを活用できる」と約束した。
SASはこれまで積極的に“AI”という言葉を表に出さなかった。だが、「アナリティクスがAIと同義に使われることもある」というグッドナイト氏の言葉通り、データを分析するアナリティクス(解析)、そしてその中からパターンや関係性を見出す機械学習、機械学習を含むAI(人工知能)などが同義的に使われるようになりつつある。
Oliver Schabenberger氏
そこで、SASは2016年に機械学習、画像やテキスト解析、異常検知などの機能を備えるプラットフォーム「SAS Viya」を発表した。ここではSAS言語に加え、データ分析でよく使われるPython、Rも利用できるようにした。「SASはプラットフォーム、顧客が望んでいるものを利用できるようにする」とCOO兼CTOのオリバー・シャーベンバーガー(Oliver Schabenberger)氏は説明する。
企業はビックデータ技術によりデータを蓄積しており、今後はIoTのデータも加わる。現在IoTのデータはまだ進んでおらず、SASはさらなる成長のチャンスと踏んでいる。