どの産業にも無関係ではないと言われている「デジタルトランスフォーメーション」の時代にあって、BtoBであれBtoCであれデジタルでのプレゼンスは不可欠だ。そこでAmazonや楽天を経由するのではなく、「顧客と直接つながる」ことが大切というのがSAP Hybrisの高山勇喜氏だ。デジタルコマース、デジタルマーケティング分野で何が起こっているのか、高山氏はじめSAP Hybrisの幹部に聞いた。(取材・文/末岡洋子)

アマゾンでいくら売れても顧客情報は入ってこない――BtoC企業が悩むマーケティングの課題右からSAP Hybrisの阿部匠氏、高山勇喜氏、吉元宣裕氏。「2017年の上半期は前年同期の2.3倍売れている」と高山氏、「1)デジタル化、2)システムの導入、3)顧客の組織や文化が変わる、の変化の3ステップがBtoB、BtoCで起き始めている」と解説する

“実態はBtoB”のBtoC企業が多い

 経済産業省が発表する最新のデータによると、BtoC市場におけるEC化率は5%。比率は低いが、その伸び率は年10%近くで伸びている。デジタルでのプレゼンスはどの産業でも死活問題と言える。SAP Hybrisは1990年代後半にECソリューションでスタートしたスイスのベンチャーhybris(2013年にSAPが買収した)を土台としたフロントオフィスライン。インターネットだけではなく実店舗にも対応したオムニチャネルの仕組みを早期から提供している。

 アパレル、食品などは消費者向けに商品を開発、提供することから「BtoC」と言われるものの、SAP Hybris ソリューション事業本部事業本部長を務める高山氏はその実態は「BtoB」と指摘する。「洋服や靴は三越などの百貨店、続いてZOZOTOWN、Amazon、楽天などのECでの売り上げが多い。自社のWebサイトで売れているわけではない。つまり百貨店だったりAmazonだったり企業を相手としている」と高山氏。Amazonなどは簡単にECに参加できるチャネルだが、問題がある。「これらのWebサイトから売れたとしても、自社製品を買ってくれた顧客情報は名前、売れた商品、点数ぐらいで、誰なのかほとんどわからない。性別、住所すらわからないこともあり、家族構成なども不明。これではマーケティングができない」というのだ。

 そうなると、SNSでつぶやいてもらった、コンタクトセンターに電話をかけた、デジタル/フィジカルのイベントに参加した、Instagramの広告を開いてくれた、といった重要な情報と結びつけることができない。これらの挙動がわかり、デジタルでの購入情報と一致させることができれば、ロイヤルカスタマーかどうかがわかる。つまり、顧客が分かればその顧客の適した対応が可能となり、ロイヤリティに応じたマーケティングを展開してエンゲージを強め、売り上げアップ、ブランド認知のアップにつなげることができるというわけだ。

 このようなEC専門サイトの“落とし穴”に気が付き始めているところが出てきている、と高山氏。「“脱Amazon”で直接消費者とつながるというトレンドが来ている。あなただけに、あなたはこれが好きだから、とセグメンテーションしてマーケティングする必要がある」と高山氏は続ける。

 BtoCだけではない。部品メーカーなどBtoBでも直接のつながりに向けた取り組みが始まっているという。国内市場の縮小を受けて部品メーカーも海外進出を進めているが、日本と異なる商習慣がある東南アジアなどでは代理店がいくつも入る上、メーカーは保証期間内に部品交換が発生した際にコスト節約のために現地の部品を調達するケースもあるという。代理店をいくつも経由しているとロイヤリティが下がりコストもかさむ上、現地で独自に調達した部品が入ると故障が増えることも考えられる。そこで、部品メーカーもポイント制度を取り入れるなどのロイヤリティ改善策に取り組んでいるという。