20世紀を代表する日本のスポーツマンといえば、日本国内ではプロ野球の長嶋茂雄さんや王貞治さんたちが圧倒的な知名度を誇っていますが、ヨーロッパや中国などでは今も、荻村さんの知名度が上回っているのではないでしょうか。今回の世界選手権でも開幕前に行われた日本とスウェーデンの外交150年を祝う友好試合は『オギムラ・メモリアルマッチ』と銘打たれました。
日本卓球、大躍進の原点は「荻村伊智朗」にあり
このほかにも、荻村さんの功績を語り出したらきりがありません。今日の「10代卓球選手の躍進」に焦点を絞っても、荻村さんの“遺言”が強く反映されているように思います。
日本のスポーツは長く、学校教育の枠のなかに位置づけられてきました。
中学校の卓球部に所属すると、指導者は全国中学校卓球大会での優勝が最大の目標ですから中学のレベルで頂点に立つための練習をします。高校に進学すれば、また高校の卓球部の指導者がインターハイの優勝を目指して指導をします。大学に進学してからも、同様です、それぞれの年代ごとに指導者が変わり、世界レベルで戦うために必要な技術を一貫して学ぶ機会も時間もありません。
「中学や高校の段階で目先の勝利ばかり考えていると、絶対にホンモノにはなれないんです。小さいころから最高のレベルを目指し、一貫して指導できる体制が必要です」
荻村さんは今から半世紀近くも前からこのような発言を繰り返し、「強化システムの不備」に疑問を呈していました。もちろん、教育の一環として卓球に取り組む学校の部活動も必要です。しかし、世界レベルの選手を育てるためには、このシステムだけでは限界がある。幼少期から一貫して英才教育を行う「場」が不足していることが、日本卓球界の問題だと、荻村さんは考えていたのです。
実際、荻村さんはこんな一石を投じました。